リングにかける男たち

武藤敬司に見るトップレスラーの必要条件はコメント力

武藤敬司(56)に35周年のインタビューをしたときに、プロレスラーのコメント力の話になった。近年のプロレス界において、そのコメント力は、トップレスラーになるための必要条件となっている。アニトニオ猪木を始め、一時代を築いたレスラーの名言は多い。

新日本プロレスとUWFインターの対抗戦。メインイベントで高田延彦(右)にドラゴンスクリューを決める武藤敬司
新日本プロレスとUWFインターの対抗戦。メインイベントで高田延彦(右)にドラゴンスクリューを決める武藤敬司

そんな中でも、武藤のコメントは異彩を放っている。

「プロレスは芸術だ」

「プロレスはゴールのないマラソンである」

武藤は「今でも言うやつはいるけど、プロレスが芸術だと最初に言ったのはオレ。今は、長いセリフを事前に考えてしゃべるやつもいるけど、昔は自然に言葉が出てきたんだ。それがお客さんから評価され、逆に応援してくれるお客さんに力をもらった」と話す。プロレスを人生にたとえ、選手の頑張りを自らの生き方に重ねて共感するファンは多い。

記者が好きな言葉は「思い出とケンカしたって勝てっこない」という言葉だ。武藤が所属した新日本には、アントニオ猪木を始め、偉大な先輩が数多くいた。長州力など、主力選手の大量離脱で、団体を支える役目は武藤ら、闘魂三銃士と呼ばれた新たな世代に回ってきた。大きなプレッシャーと戦い、苦闘するなかで発した言葉だという。

その言葉は、内館牧子氏の書いた小説「終わった人」の中に引用されている。「内舘先生が、コメントでオレの言葉が気に入ったと言ってくれてうれしかったよ」と武藤は喜んでいた。プロレスは、リング上の戦いと同時に、過去との戦いもある。有名になればなるほど、過去の名レスラーと比べられる。そこに、武藤の言葉は今を生きる大切さを訴えた。

その言葉は、その後WWEに行った中邑真輔が「過去と戦って何が悪い」と引用するなど、ときどきプロレスのシーンで顔を出す。武藤の後輩たちも、過去と戦い続けているということだ。56歳になった武藤は、いまだ現役でプロレス界に君臨する。これからも、天才と呼ばれるプロレスと、異彩を放つ名言を期待したい。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

「プロレスは芸術だ」。35年たった今も変わらぬプロレスLOVEを語る武藤敬司(撮影・中島郁夫)
「プロレスは芸術だ」。35年たった今も変わらぬプロレスLOVEを語る武藤敬司(撮影・中島郁夫)

日刊スポーツのバトル担当記者のとっておきコラム。プロレス、ボクシング、総合格闘技の現場からお届けします。

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