満員の国技館を久々に体感できた。先日、10月末に公開される大相撲ドキュメンタリー映画「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」の試写会に足を運んだ。コロナ禍以前の、大勢の観客でにぎわっていた本場所の様子が、美しい映像と音響で何度か流れた。忘れかけていた大歓声だった。

主に登場するのは境川部屋と高田川部屋の力士だ。18年12月から19年6月の半年間に密着している。見どころは数多くあるが、けがと闘う元大関豪栄道(現武隈親方)の姿は必見。弱音を吐かない「やせ我慢」の精神は、初の大相撲ドキュメンタリー映画という本作の主役にぴったりだった。

春巡業で稽古に励む豪栄道(2019年4月21日撮影)
春巡業で稽古に励む豪栄道(2019年4月21日撮影)

大相撲ファン以外にもおすすめできる作品だ。立ち合いの「ゴンッ」という鈍いぶつかり音は、生で聞く以上に鮮明で度肝を抜かれる。番付制度など角界の複雑な仕組みも丁寧に説明されており、初心者も違和感なく楽しめるはず。映画はTOHOシネマズ錦糸町で10月30日、中野区のポレポレ東中野で同31日ほか全国で順次公開。コーディネートプロデューサーを務める相撲漫画家の琴剣淳弥さん(60)の言葉を借りれば「この映画を見終わったあと、きっとあなたも国技館へ行きたくなっているでしょう」。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)