集大成は東京ドームで-。ボクシングのWBA世界ミドル級王者村田諒太(32)が15日、IBF世界スーパーフェザー級王者尾川堅一(29)、元2階級王者粟生隆寛(33=ともに帝拳)と沖縄県内で行っている合宿を公開。昨年10月に王座戴冠後の心境の変化を語り、「最終的には東京ドームで試合をしたい」と明かした。ヘビー級統一王者マイク・タイソン(米国)がタイトル戦で敗れた90年以来の開催を掲げ、国内ボクシング界の盛り上げに貢献する強い意志を示した。

 冬でも強く注ぐ沖縄の陽光に照らされた顔を、村田はひときわ引き締めた。

 「ビッグファイトを日本でやりたいですね。それがボクシング界に恩恵を返すことになる。東京ドーム、最終的には日本で大きなイベントをやりたい」

 五輪金メダリストとして日本人初の世界王者になった17年から年が明け、新たな、そして大きな競技人生の目標が生まれていた。

 昨年は2度の世界戦を戦った。5月にエンダム(フランス)との王座決定戦に不可解判定で敗れた。物議は醸したが、当人は一流選手と渡り合った自信から、現役続行を決めた翌6月には「夢のまた夢」に描いた米ラスベガスでのビッグマッチを未来に据えた。そして再戦となった10月に7回TKO勝ちすると、また見える景色が違った。「ステージが上がっていくと見える目線が変わってきた」。

 紅白歌合戦の審査員など多忙な年末の日々の中で、自らへの注目度を肌で感じ、使命感が生まれた。これまでは会場の希望などは一切口にしなかったが、「ラスベガスももちろんやりたいですが、ドームも現実にしていいんじゃないか。盛り上がってほしいですから。タイソン戦以来となれば最高じゃないですか」と言葉は熱を帯びた。

 道のりは険しい。まずは4月に国内で予定するV1戦。そこをしっかりクリアしてこそ、現実味を生み出せる。この日の練習では約2キロの坂道を計3本駆け上がった。12日に32歳になったが、タイムはやる度に伸び、肉体面での未来は明るい。リングで結果を出し続ければ…。「ボクシングというもののスポーツが持つ力があれば、状況を変えられる」。世界で最も層が厚いミドル級で、日本人には不可能と言われたことを成し遂げてきた。夢物語を現実にしてきたその言葉には、説得力があった。【阿部健吾】