挑戦者の日本ミドル級3位能嶋宏弥(26=薬師寺)が、国内現役最年長44歳の王者野中悠樹(渥美)に6回1分1秒、TKO勝ちして王座を奪取。過去10戦中8戦はウエルター級、ミドル級での戦いが初めてだった男が、鮮やかな大番狂わせを演じた。
元WBC世界バンタム級王者・薬師寺保栄会長(54)は、愛弟子の勝利を「とにかく“ボクシングをさせるな。攻めて、攻めて、攻めろ”と言ってました。よく練習するし、聞く耳がある子なんでスタミナとかの心配はなかったけど、ものすごく気が弱くて…。今日も“相手の顔が怖いです”とか言うて」と喜んだ。
薬師寺会長は、ジム生をロードワークに連れて行った名古屋市内の公園の公衆トイレ前で、中京大2年の能嶋と出会った。「あの時、彼が“このへんでトイレットペーパーのあるトイレはないですか?”と尋ねてきて。それで“ウン”がついたのかな」と笑う。
自身が54歳になった2日前の7月22日、能嶋に「おめでとうございます」と言われて「もっといいプレゼントをくれよ、と言っておいたんです」。自身は94年12月4日、辰吉丈一郎を破ってWBC世界王座を手にした歴史的一戦で、トレーナーだったマック・クリハラ氏に「今日は俺の誕生日だから、プレゼントをくれ」と言われて、勝利を贈った。
「それと一緒ですよね。それに、あの時も世間は僕が7割、8割、いや9割は負けると思ってて、ひっくり返しましたし」。師弟関係、番狂わせが重なった弟子の快挙に笑顔がたえなかった。

