西前頭3枚目栃ノ心(30=春日野)が念願の初優勝を飾った。勝てば優勝の一番で東前頭9枚目松鳳山を寄り切り、13勝1敗とした。13年名古屋場所の右膝前十字、内側側副靱帯(じんたい)断裂から4年半。東欧のジョージアからやって来て12年。12年夏場所の旭天鵬以来となる平幕優勝を果たした。

 栃ノ心の故郷ジョージアの実家では、母ヌヌさん(51)や妻ニノさん(30)、近所の住民らがインターネットの動画中継で観戦し、涙を浮かべて勝利を祝った。優勝が懸かった大一番。心配そうな表情の家族らは勝利の瞬間、拍手や万歳のポーズで喜びを爆発させた。時折途切れるネット環境の中で優勝を見守ったヌヌさんは「教会に通い、勝利を祈っていた。不断の努力の結果だと思う」と十字を切り感謝した。

 ニノさんは娘のアナスタシアちゃんを抱いて観戦。「昨日の電話で『頑張ってください』と日本語で伝えたら、夫は『頑張る』と言っていた。勝てると信じていた」と話した。医師のニノさんは現在、育児の傍ら日本語を勉強中という。

 実家は首都トビリシから約30キロ離れた、グルジア正教の大聖堂など世界遺産で知られるムツヘタ近郊の人口約1500人のゼグビ村にあり、敷地内も含めて周囲にはブドウ棚が広がる。

 柔道の元欧州ジュニア王者でもある栃ノ心に幼少期、柔道を教えたコーチのギビ・イシハニシビリさん(75)は「子供の頃から練習熱心で強かった。こんな小さな村から相撲の優勝者が出た。村の誇り」と語った。

 ◆ジョージア 91年に旧ソ連から独立した東欧の共和制国家。首都トビリシ。日本での呼称は14年10月に「グルジア」から変更された。ロシア、トルコに隣接し、面積約6万9700平方キロメートルは日本の約5分の1。人口約400万人。ワイン等の食品加工業などが盛ん。栃ノ心は国旗をデザインした化粧まわしなどを使用。主な出身者に元小結黒海(12年秋場所で引退)元小結の十両臥牙丸、72年ミュンヘン五輪柔道93キロ級金メダリストで、89年4月にアントニオ猪木と異種格闘技戦を行い、KO勝ちしたショータ・チョチョシビリら。