新型コロナウイルス感染拡大の影響で自宅待機命令が出されている米国で今、Netflixが先月20日から配信をスタートしたドキュメンタリーシリーズ「タイガーキング:ブリーダーは虎より強者!?」が一大ブームになっています。リアリティー番組でおなじみのキム・カーダシアンや俳優ジャレット・レト、オーランド・ブルームら多くのセレブもSNSで話題にしており、米市場調査会社ニールセンによると配信からわずか10日間で3430万人が視聴したとのこと。映画評論サイト、ロッテン・トマトでは批評家評97%、一般視聴者評96%をたたき出し、3月29日時点でアメリカで最も観られたNetflix番組にもなったとバラエティ誌が伝えています。いかにも怪しげなタイトルなので観ていない方にはなぜこれほどまでにヒットしているのか想像がつかないと思いますが、自宅に籠る人々の話題を独占する「タイガーキング:ブリーダーは虎より強者!?」とはどのような番組なのでしょう。

オーランド・ブルーム
オーランド・ブルーム

「タイガーキング:ブリーダーは虎より強者!?」は、タイガーキングことジョー・エキゾチックと名乗る私設動物園のオーナーを中心とするドキュメンタリーシリーズですが、とにかく登場人物が全員ヤバすぎることが特徴。米国最大規模のトラの繁殖施設を運営していたエキゾチックは、2018年にトラの虐待と殺人依頼の罪で逮捕され、今年1月に22年の実刑判決を受けた曰くつきの実在する人物で、大統領選やオクラホマ州知事選にも立候補したこともあるほど目立ちたがり屋で派手好きなことで知られています。さらにエキゾチックのライバルとして知られる動物愛護活動家キャロル・バスキンには億万長者の夫を殺した疑惑があり、カルト教団のリーダーから詐欺師に麻薬王までクレイジーな登場人物が溢れています。カーダシアンも、ツイッターで「クレイジーよ!!!」とつぶやいていますが、お騒がせセレブをも脱帽させるトラよりも恐ろしい強烈キャラが人気の秘訣なのです。

襟足部分の髪だけ長く伸ばしたダサすぎるマレットヘアに顔面ピアスの個性的な風貌のエキゾチックは187頭ものトラや蛇、ワニなど野生動物を飼いならし、まるでムツゴローさんのようにトラと戯れる姿に視聴者は絶叫。さらに次々と明らかにされる想像を絶するエピソードが作り物のドラマではないことが衝撃的で、観た人たちが話題にして周囲に広めていったのがヒットの要因です。SNSでエキゾチックが身に着けるヒョウやトラなどアニマル柄を身に着けて盛り上がる人も多く、シルベスタ・スタローンまでも一家総出でコスプレを披露しているほどセレブたちもハマっています。

エキゾチックは4月2日に収監されているテキサス州の刑務所で新型コロナウイルスに感染して医療施設で隔離されたと報じられる中、Netflixは12日に後日談としてアフターショー「ザ・タイガー・キング・アンド・アイ」も配信。トラを巡って繰り広げられる低レベルで醜い争いを追ったドキュメンタリーは、外出自粛で退屈している人たちにとって最高のエンターテイメントとなっているようです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)