99年に日本で公開された不朽の感動作を約20年の時を経て、4Kスキャンした「デジタル修復版」(121分)でよみがえらせる。船内の演奏シーンは照明を取り換えたかのようなきらびやかさだ。99年公開時には実現しなかった170分の「イタリア完全版」も初公開。少年時代、ピアノ演奏などカットされた40分以上のシーンが復活する。

修復&完全版ともストーリーは変わらない。大西洋を往復する豪華客船のピアノの上に生後間もない赤ん坊が捨てられていた。彼の名は1900(ナインティーン・ハンドレッド)。見つかったのが世紀の変わり目を告げる1900年にちなみ名付けられた。成長した青年は類いまれな即興曲を次々と作り出していく。

どうやってピアノを覚えたのか? ツッコミどころはあるが、音楽がすばらしい。国籍も家族も故郷もない自由な芸術家。裕福な客の前では華麗な旋律、3等客船では懐かしい旋律を奏でる。楽譜は読めなくても、乗客たちの表情やしぐさからその人生を想像し、ピアノの音色で対話しているようだ。舷窓越しに美しい少女を見かけ、思いを寄せるピアノの調べはやさしく切ない。【松浦隆司】

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