主要なキャストと役どころだけを見れば一見、三角関係を描いた恋愛映画に見えるかも知れない。

<1>門脇麦(28)東京の上流家庭に生まれ、理想の相手探しに奔走する榛原華子

<2>水原希子(30)富山で猛勉強して名門大学に入学も、夜の街で働いても学費が続かず中退した時岡美紀

<3>高良健吾(33)美紀の大学の同期で、華子にプロポーズした名家の息子で弁護士の青木幸一郎

長編映画だが、6章に分けて東京出身の華子と地方から上京した美紀との違いを浮き彫りにしていく。第1章「東京」では、華子が親密になる過程で幸一郎に届いたLINEで美紀の存在を知る。2章「外部」では、富山から受験を経て進学した美紀と、幸一郎ら内部進学した学生との生活レベルの違いと2人の接点を描き、章を重ねるごとに3人の人生が絡み合い、人間の裏と表も見えてくる。

岨手由貴子監督は16年11月、出版記念イベントで作者の山内マリコ氏に直訴し、映画化にこぎ着けた。上流階級の調査だけで約半年かけ、19年3月のクランクイン後もセリフを差し込むなど、自ら手掛けた脚本は精緻で、1片のピースが1枚の絵に組み上げられていくパズルのような、秀逸な1本だ。【村上幸将】

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