紅白歌合戦で米津玄師が歌った大塚国際美術館のシスティーナ・ホール(2017年11月)
紅白歌合戦で米津玄師が歌った大塚国際美術館のシスティーナ・ホール(2017年11月)

大みそかの紅白歌合戦で、米津玄師さんがテレビで初めて歌声を披露した大塚国際美術館(徳島県鳴門市)が、ファンの“聖地”化するなど大きな話題になっています。バチカン市国のシスティーナ礼拝堂を原寸大で再現した荘厳な空間での幻想的なパフォーマンスは、感動的な歌声とともに、紅白名場面として歴史に刻まれるインパクトだったと思います。

昨秋に足を運んでいるのですが、画面から伝わってきた通り、圧倒的な空間です。入場口から41メートルもある長いエスカレーターを上ると、ドーンと目の前に現れます。米津さんの背景になっていたミケランジェロの「最後の審判」の壁画や、旧約聖書の天井画が頭上にそびえ立つ、という感じ。想像したよりも大きく、上の階から見るとさらに大スケールを感じられます。

紅白の中継では、「最後の審判」の前にステージを設置。両サイドにたくさんのキャンドルを置いた長いストロークは光の道のよう。宗教的な厳かさが、大切な人を失った喪失感を歌う「Lemon」の歌詞に合っていて、この曲の制作中に祖父を亡くしたという米津さんの思いも重なります。「祖父が暮らした故郷で歌唱することに何か大きな意味があるような気がして」と、故郷・徳島からの中継を快諾した意味が伝わってくる中継でした。

紅白歌合戦で米津玄師が歌った大塚国際美術館(2017年11月)
紅白歌合戦で米津玄師が歌った大塚国際美術館(2017年11月)

同美術館は、大塚製薬グループが98年にオープン。ダ・ヴィンチの「モナリザ」、ピカソの「ゲルニカ」、ゴッホの「ひまわり」など、1000を超える西洋名画を原寸大で複製して展示する、世界にも例のない名画美術館です。絵の具の厚みや筆致まで精巧に再現されていて、オリジナルの大きさや雰囲気を一気に見ることができます。「フランダースの犬」でネロとパトラッシュが最後に見たルーベンスの絵とか、アートに疎い私でも知っている作品が次々と出てきて、楽しい空間です。

チャンスがあればもう1度行ってみたい場所だったので、話題の米津さんの中継ステージとして画面に出てきてびっくり。米津さんの歌唱の視聴率も44・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、サザンオールスターズに次ぐ高視聴率で注目度の高さを物語りました。記憶にも記録にも残る、すてきな演出でした。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)