米朝一門の人気落語家桂吉弥(47)が15日、大阪市内で、毎年恒例の「桂吉弥独演会」(5月8日、サンケイホールブリーゼ)の取材会を開き、亡き師匠が最後に演じた「弱法師(よろぼし)」を演目に決めたと明かし、師匠への思いを語った。

 吉弥は94年、05年に亡くなった桂吉朝さん(享年50)に入門。吉朝さんは華やかさをあわせもった名人芸で知られ、その師匠の故桂米朝さん(享年89)も感服する腕の持ち主だった。

 「弱法師」は、米朝さんの師匠で先代の4代目桂米団治さんが演じてきたネタで、米朝さんは、書き起こして自身の全集にも収めていたが、米朝さん自身が高座にかけることはなかった。この思いを知った吉朝さんは、胃がん闘病しながらも、結果として最後の舞台になった高座で、この「弱法師」を演じていた。

 吉弥は当時、仕事が重なり、吉朝さんの最後の高座は見られなかった。

 「7人の弟子のうち、僕以外は見てたんです。体調も悪かったので、最後になるかも? とは思っていたんですけど、でも、仕事を断って、師匠の高座を見に行けば、僕が『最後』って決めたみたいになる。師匠も絶対、怒ると思って」

 結果的に悪い予感は的中。音源では当時のネタを渡されたものの「なかなかしっかりとは聞けなかった」と振り返った。

 そんな中、昨年、師匠の十三回忌で全国を回り、師匠の高座姿に向き合ったことで、今年の演目にかけようと決意にいたったという。「米朝師匠は、下を向いてつぶやくように、とか、ひじょうに細かく残してくれていた」。師匠のこん身の音源と、大師匠の書き残しをもとに、“ぜいたくな”稽古に励み、昨年12月にも高座にかけ、ネタを磨き上げている最中だとも語った。

 スター性も実力も兼ね備えた吉朝さんは、存命であれば、上方落語を背負って立つ存在だった。

 吉弥は「確かに、うまさ、きれいさ、おもしろさ。そうですね…」と口にすると、天をあおぐようにして、感極まった表情でしばらく沈黙。「残念な気持ちも、悔しい気持ちもあります。でも、僕は11年だけだったんですけど、いっぱいヒントを残してくれました。『俺はお前らにヒントは残した。後はお前らでやれ』と言ってくれていると思います」と続けた。

 亡き師匠に背中を押され、歩む日々に感謝している。独演会ではほかに「青菜」と、創作「ワンダフル」の3席を演じる。