新潟を拠点に活動する女性アイドル3人組NegiccoのリーダーNao☆(30)が2月26日に、3人組バンド空想委員会のベーシスト岡田典之と、誕生日の4月10日に結婚することをツイッターなどで発表した。

2人の出会いは、15年9月に東京・日本武道館で行われたPerfume主催の音楽フェス「Perfume FES~三人祭~」だった。同フェスを客席から見ていたが、Nao☆のド緊張ぶりが懐かしく思い出される。

グループの最大目標であった武道館のステージに、招待とはいえ初めて立ったNao☆は、餅をテーマにしたトークで「砂糖じょうゆ」を「しょうゆじょうゆ」と何度も言ってしまった。ミスに気付くと、赤面して両手で顔を覆ってしまう、おっちょこちょいぶり。ステージ上で岡田と直接、絡む機会はなかったものの、そんなかわいらしく、守ってあげたくなるような姿が、岡田のハートを射止めたのかもしれない。

Nao☆の結婚発表に、長年苦楽をともにしてきたメンバーのMegu(29)、Kaede(27)だけでなく、同じアイドル仲間からもお祝いの言葉が多数寄せられた。中でも、Negiccoファンで知られるSKE48高柳明音(27)は、ツイッターで「続けることの大切さ 地元を愛する気持ち いつも刺激をもらってます」とつづり、「素直にうれしいしすてきだなあと思います」と祝福した。実にほほえましい、理想的な結婚発表だったように思える。

一方で、アイドルと結婚…2つのキーワードから、16年の騒動を思い出さずにはいられない。1月に芸能界を引退した須藤凜々花さんの、AKB48選抜総選挙での突然すぎる結婚宣言だ。同じ「女性アイドル」の同じ「結婚発表」だが、祝福ラッシュのNao☆と対照的に、須藤さんの発表は世間を巻き込んだ大論争になった。周囲の反応が極端に違った理由を分析した。

(1)発表方法 Nao☆はツイッターで直筆のメッセージを掲載し、丁寧な言葉で結婚を発表した。須藤さんの場合は、発表の場が物議を醸した。選抜総選挙は、熱心に応援してくれているファンが、寝食の間を惜しんで投票した結果、ランクインしたメンバーだけが立てるステージ。ファンに用意された晴れ舞台で結婚を発表してしまったため、大きなハレーションが起きた。

(2)ファン層 Negiccoは新潟のご当地アイドルで、名前の示す通り、地元のねぎのPRのため結成された。それから何年かは農業関連のイベントも多く、いわゆるアイドルファンが盛り上げていったグループとは一線を画す。今でも地元のコンサートやイベントに行くと、家族連れや年配の方が多く、メンバーに疑似恋愛をする「ガチ恋」と呼ばれるファンは少なかった。昨年2月には、グループ初のウエディングソング「カリプソ娘に花束を」をリリース。少数派のガチ恋勢も、ある程度は覚悟していたかもしれない。一方の須藤さんは当時、ガチ恋ファンを多数抱えていただけに、反響は大きかった。

(3)実績と年齢 Negiccoが結成されたのは03年。05年結成のAKB48より歴史は古い。当時は、地方で活動するアイドルグループはほとんどなく、00年結成のりんご娘(青森)とともに、ご当地アイドルの先駆者的存在だった。Nao☆も保育士のバイトをしながら活動を続けた時期もあり、幾度の解散危機を乗り越えて東京・中野サンプラザなどでコンサートを行えるほどになった。15年にわたりグループを引っ張り、ご当地アイドルブームの発展に尽くしたNao☆の功績は、ファンや同じアイドル仲間の知るところ。30歳になった今、人としての幸せをつかんだNao☆に、祝福の声が寄せられたのは当然だった。須藤さんは、発表当時まだ19歳。グループでセンターの経験などはあったものの、Nao☆ほど結婚発表への理解を深める実績を残したかどうかは、微妙なところだ。

(4)キャラの違い Nao☆は一見、明るく元気な天然キャラではあるが、グループの活動や人生について真剣に悩む姿を、これまでもメンバーやファンに見せてきていた。一方の須藤さんは、もともとの炎上キャラもあり、結婚発表後や結婚後もバラエティー番組を中心に言いたい放題。熱心に応援してくれたファンを、時に笑いのネタにすることもあり、賛否は分かれた。

かつては契約条項に「恋愛禁止」を明記していたアイドルグループも、最近では人権に配慮し、その文言を外しているという。アイドル=疑似恋愛の対象ではなくなってきている一方で、「ガチ恋」ファンがアイドルビジネスを支えているのも事実。要は、アイドルファンが「アイドルとしてのメンバー」を応援しているか、「メンバーの人生そのもの」を応援できるかの違いなのだろう。とはいえ、幸せのつかみ方は、人それぞれ。Nao☆、須藤さんとも取材した経験のある記者からすれば、どちらも幸せになってもらいたい気持ちではある。