昨年秋放送の日本テレビ系「俺の話は長い」(金子茂樹氏脚本)は、生田斗真を始め個性派のそろったドラマだったが、お母さん役原田美枝子のほっこりとした雰囲気が印象に残った。10代の頃の映画「大地の子守歌」や「青春の殺人者」の鮮烈なイメージが記憶に残っているだけに、文字通り隔世の感がある。61歳になった彼女に先日インタビューする機会があった。

「俺の-」の収録については「とにかく楽しくて仕方のない現場でした」と振り返る。だが、そんな心境になるまでは曲折があったようだ。

10代で映画各賞の新人賞、主演賞に輝いた頃はとがっていた。

「増村保造さん、神代辰巳さん、勝新太郎さん、黒沢明監督…若い頃はすごい人ばかりにお会いして、大の大人たちがもっともっとと撮り直しを重ね、上を求めていく現場に魅せられたんですね。だから30代になった頃、正直、物足りなさを感じることもありました。『えーっ、これでOKなの』とイライラした。自分をうまくコントロールできなくて、いつも怒っていましたね」と明かす。

撮影現場での「とんがりエピソード」と言えば、桃井かおり、秋吉久美子…ほぼ同世代で「巨匠」たちの洗礼を受けた女優さんたちに共通している。微妙な個人差はあるのだろうが、原田の話を聞きながら、彼女たちの「心の中のメカニズム」が垣間見えた気がした。

原田の場合は38歳の時に「愛を乞う人」で再び主演賞を総なめした。その間には子育てがあり「子役さんとの関わり方も変わり、いろいろ見えるようになって肩の力が抜けました」と言う。

ここで触れるまでもなく、私生活では桃井にも秋吉にもいろいろあったが、息の長い「現役感」は共通している。その背景には10代の頃に「巨匠」たちにもまれ、染みついた女優根性のようなものがあるのだと改めて思った。 【相原斎】