映画の配給や映画館などの経営を行う「アップリンク」代表の浅井隆氏(65)からハラスメントを受けたとして、東京地裁に同氏と同社に対して16日に損害賠償などを請求する訴訟を起こした元従業員が22日、都内で会見を開いた。

元従業員3人は、浅井氏が訴訟を提起されたことを受けて16日と19日に発表した謝罪文は、原告側に謝罪も断りもなく行われた、対外的に謝罪のポーズを示したものにすぎず、受け入れられないと涙ながらに憤った。

原告の代理人を務める馬奈木厳太郎弁護士は、浅井氏が19日に発表した謝罪文が「謝罪しますと言いながら、謝罪の分量はわずかで、具体的にいつ、誰に何をして、どう理解しているかが極めて抽象的。一般的なおわびをしているにすぎず、本当に自覚しているか分からない」と謝罪の意思が感じられないと指摘。その上で「それ(謝罪)より、はるかな分量を会社の成り立ちなど自己紹介に当てて、直近2年間の事業拡大、会社運営の問題に論点をすり替えているのではないか? あたかも、ハラスメントが2年間に限定されるような書きぶりだが、実際に2年間に限った話ではない」と、浅井氏の謝罪が内容が乏しく、論点をすり替えていると批判した。

馬奈木弁護士は、新型コロナウイルスの感染拡大で存続危機を迎えるミニシアターの救済を目的としたプロジェクト「#SAVE THE CINEMA ミニシアターを救え!」の呼びかけ人を務めている。アップリンクをはじめミニシアターの支援に動いている立場から、現状をどう考えているかと聞かれると「#SAVE THE CINEMAでは、公的な基金の創設、助成を求めている。ミニシアターが、どういう場であるべきなのか、文化の担い手という人たちがどういう担い手であるべきか…とにかくそこを救う。私自身の立場は全く矛盾していない。むしろ両立している」と強調した。

元従業員たちは、提訴した16日の会見でも、浅井氏による日常的なハラスメントに加え、残業をしても賃金が支払われない、いわゆるサービス残業がアップリンク社内で常態化していたことも指摘した。質疑応答では、そうした良からぬ業態はアップリンクに限った話ではなく、映画業界全体の問題でもあるのでは? との質問が複数、あった。

馬奈木弁護士は「私は映画業界のプロパーの人間ではないが、何作品か製作に関わり、映画館の人ともお付き合いがある。今のままのミニシアターで良いと思ってはいないからこそ、単に映画館を経済的に支援するだけでなく、文化とその担い手がどうあるべきかを含め、中長期的に考えている」と説明。その上で「ハラスメントにとどまりませんが、働いている人の問題…作り手の中にもフリーランスが多い。考えていかなければいけない」と訴えた。7月には#SAVE THE CINEMAでイベントを開催し、アップリンク問題含め、考えることになる予定だという。

質疑応答の中で、元従業員3人に対して、16日の会見後、反応があった中で、別の会社でもハラスメントの被害があったという連絡があったか? という質問が出た。原告は「あります」と答えた。