昨今の80年代シティ・ポップブームで、再びスポットが当たった「真夜中のドア~Stay With Me」。同曲を歌唱した歌手松原みきさん(04年死去)の親戚が今春、本格的に女優活動をスタートさせた。
女優松原もか(22)。3月に日大芸術学部演劇学科を卒業、役者への道を歩き出した。4月には舞台「東海道四谷怪談」に出演、5月も舞台「珈琲いかがでしょう」(17日開幕、東京・シアター1010)の出演が控える。
メディア関係の仕事に就く、もかの父がみきさんといとこ。「みきさんの記憶はないのですが、葬儀に参列したことはよく覚えています」。
芸能界に興味を覚えたのも、みきさんの影響があるという。「父も母もアクティブで音楽好き。だから、私も小さいころから楽器をやりたいと思っていました」。ただ、演劇に目覚めたのは、小学生で参加したミュージカルのワークショップ。「海外の方が歌とダンスを教えてくださり、最終日にショーケースがあるような。英語を上達させたかった母が勧めてくれました」。
それがその後の人生を決めるきっかけになった。「小さいころから歌ったり踊ったりは大好きだったんですけど。ミュージカルっていうものを初めて知って。もうこれだ!って思って。舞台に立って表現することや、カーテンコールで拍手をもらった時の達成感が、それまで感じたことのない大きな喜びで。本当に大好きになりました」。
地元の劇団に入り、高校では演劇部。大学は日芸の演劇学科を選んだ。首尾一貫している。もちろん、歌も大好き。YouTubeでは名曲をカバーしており、みきさんの「真夜中のドア」も歌う。みきさんのリバイバルは、もかを応援しているようにも見えるが「ミュージカルが大好きなので、歌も好きですが、やはりお芝居を、と思っています」。
大学で演劇を学んだのは芝居を突き詰めたいなと思ったから。「高校は部活でしたし、座学で演劇を学んだことはなかったので。一番勉強になったのは、表現的なものもそうですけど、台本を読み解く力というか、役作りをする上で台本へのアプローチの仕方が勉強になりました。役作りの組み立て方もそれぞれの感覚なんでしょうが、見てる人の感じ方もあるので、やはり、積み重ねたものがあってこその表現だと学べたことは大きいかなと思います」。
子どものころから、いわば演劇漬け。それでも、大学に入ると挫折も味わった。新入生の中には、全く演劇をかじったことのない人も多い。プロの演出家を呼び、オーディションで俳優を選び、舞台を制作するプログラムがあった。「全く、演技経験がない学生が主役に選ばれたんです。私もストーリー展開には大切な役をいただけたし、頑張ろうとは思いましたが、やはり悔しかった。芝居に素人の人を下に見ていたわけではないのですが、なんか、悔しかったですね。次の年は主役をいただけましたが、それは、この悔しさがあったから頑張れたのかもしれません」。
大学ではシェークスピアも、ストリートプレーも学び、もちろん、数多くの舞台を鑑賞してきた。ただ、いつも演者側の視点で見てしまうという。「この役者さんがこう見えるのは、こうやって考えてるからなのかなとか。観客としていくのですが、学びの部分もあって、役者目線で考えてしまいがちです。でも、お客さん目線で見るのもすごく大事な要素だと思うので、今日は客として何も考えずに、受け取るだけにしようとか、頑張って考えて見ています」。芝居に対する真摯(しんし)な姿勢がうかがえる。
目標とする女優を聞くと上白石萌音(25)を挙げた。「引き込まれるなって、いつも感じます。自分がその世界その物語の一員になったように思える、引き込む力をすごく持っている女優さんだなと思います。あとは、萌音さんらしさが、どの作品でも出ていますよね。それってすごく大事なことだなと思っていて。役を演じるといっても、自分が演じる意義を、しっかり確立させなきゃいけないということを、萌音さんから感じます」。
YouTubeでは名曲のカバーを続けるが、あくまでも女優一本だという。今は、舞台「珈琲いかがでしょう」に全力を注ぐ。「ミュージカルでは歌うこともあるでしょうが、それよりも演じていたい。映像の現場経験が少ないので、場数を踏みたいです」。あくまでも演じることに貪欲だ。【竹村章】
◆松原(まつばら)もか 本名同じ。2001年(平13)3月27日、神奈川県生まれ。23年3月、日大芸術学部演劇学科を卒業。特技はギター、歌、日本舞踊。趣味は、ギター、ボディーボード、地元鎌倉の開拓。芸能事務所オールウェーブ・アソシエツ所属。



