山田洋次監督(92)が30日、開催中の東京国際映画祭の企画で、今年の同映画祭で黒澤明賞の受賞が決まっている、中国のグー・シャオガン監督(35)と対談した。その中で、グー監督の19年の監督デビュー作「春江水暖」を絶賛。同作が2年間かけて撮影されたことを紹介した上で、自身の代表的シリーズ「男はつらいよ」を引き合いに「『寅さん』は2年間で、5本、作った。僕のは、おそまつ」と言い、集まった取材陣と観客、関係者を笑わせた。
グー監督は、再開発が進む故郷の杭州市・富陽を舞台に、誕生日の祝宴中に脳卒中で倒れた母をめぐる親子3代を描いた19年の「春江水暖」が、同年のカンヌ映画祭批評家週間クロージング作品に選ばれるなど、世界的に評価された。今回の東京国際映画祭では2作目の監督作「西湖畔に生きる」が、ワールドプレミア上映された。
山田監督は「こんな、すばらしい映画があるのかと、僕はビックリしまして。何て言うかな…軽やかで、温かくて、気持ちが良いのね。ちょっと褒めすぎかもしれないけれど、モーツァルトの音楽を聞いているような映画でした」と「春江水暖」を大絶賛。さらに「驚くべきことは、プロの俳優で出ているのは1人だけ。あとは彼の親戚、というのは驚くべきこと。その人たちが、日々の生活を表現し、それがドラマになっている実に不思議な映画」と「春江水暖」に出演している多くのキャストが、グー監督の身内だったと説明した。
一方で「西湖畔に生きる」には、中国の人気俳優ウー・レイ(23)が出演し、テーマもマルチ商法、詐欺を描いており「春江水暖」と作風は全く違う。山田監督は「今度の映画は、大スターも出ているし、普通の映画に近い作り方だね。すごい2枚目。良い男でビックリした」と言い、会場の脇で対談を見守ったウー・レイに視線を送った。これにはウー・レイも恐縮し、照れて両手で顔を覆った。
山田監督は6月に上海映画祭に参加した際、グー・シャオガン監督と対談し、その中で「春江水暖」の続編の製作をリクエストし、物語まで提案したという。この日の対談は、その続きがなされ、山田監督は「おいっ子が、もう1人いて(中国唯一の映画専門大学)北京電影学院で学んでいて映画を撮って驚くという…そんな話。実はね。その、おいっ子は大失敗するのよ。みんな、本人が傷ついて(実家に)帰るから素知らぬふりをしなければいけないという。そういう話を、僕なら考えちゃう」と語った。その物語とキャラクターは「男はつらいよ」と、渥美清さんが演じた主人公の寅さんこと車寅次郎のようだった。
山田監督には質疑応答で、若き才能・グー・シャオガン監督と接し、上映中の「こんにちは、母さん」の、次の最新作製作の意欲が湧くなど、刺激を受けたかと質問が出た。山田監督は「こんなこと、考えていますということはお答えできないが、少なくとも彼のようなスタッフがいたらいいなと思う。日本語が話せたらな。クリエイターとして、それほど頼りがいがあるね」と、次回作への明言は避けた。
さらに「『春江水暖』続編へのアイデアを出されたが、まるで『男はつらいよ』そっくり。中国で『春江水暖』が、その後に続いて欲しいか?」と質問が出た。山田監督は「あの名作と『寅さん』を一緒にするわけにはいかない。(『春江水暖』は)2年間かけて作った。『寅さん』は2年間で、5本、作ったんだから…僕のは、おそまつだね」と言い、観客を笑わせた。



