ウーマンラッシュアワー村本大輔(43)に密着したドキュメンタリー映画「アイアム・ア・コメディアン」が、6日から全国で順次、公開している。公式サイトやフライヤーのイントロダクションには「世間は彼の事を、嫌われ芸人、炎上芸人と揶揄する」などと書かれているが、そのように村本を捉える人に、この映画は、村本の“違う顔”を提示するのではないか、と感じている。
ウーマンラッシュアワーは、2013年にフジテレビ系で放送の「THE MANZAI」で優勝後、テレビの稼働が増え一躍、人気芸人の仲間入りをした。それが、村本が17年のインターネット番組「ABEMA Prime」出演以降、政治をネタに盛り込んだり政治的な発言を始めてから、テレビへの出演が減った。映画にはマネジャーも登場し「THE MANZAI」優勝翌年の14年に130本だったテレビの出演本数が、15年は200本、16年も250本と200件前後で推移したものの、20年になるとわずか1本と、具体的な数字をもって激減ぶりを示した。
映画は、テレビに居場所を失った村本に、日向史有監督が19年から密着。劇場とライブに活路を見いだし、スタンダップコメディーを追求して本場アメリカに武者修行するなど、世間から忘れ去られた芸人・村本の真実を3年間、記録して22年に完成した。ただ、23年10月に東京国際映画祭で上映されたものの、配給が決まらず、公開がずれ込んだという。
映画は、村本が相方の中川パラダイス(43)と漫才をするシーンから始まる。村本は言論の自由をテーマに、スタンダップ・コメディーに挑戦する自身に密着したいと言っておきながら、海外で医療用として合法的に使われていることなどを踏まえ「大麻を合法化した方がいい」などとSNSで発信したことなどで、NHKが企画を白紙にしたとみられるなどと批判した。村本自身、大麻はおろかタバコも吸わないというが、機関銃のような尖った語り口で漫才を展開する姿は非常に攻撃的に見えるし、そこに抵抗感を覚える人はいるだろう。
そうしたシーンに続き、ウーマンラッシュアワーが年に1度、テレビで漫才を披露する機会だった「THE MANZAI」出演にあたり、5分のネタに政治、社会、時事ネタを盛り込むことに試行錯誤する姿を映し出した。村本は「テレビは、えたいが知れないんでね」「僕からしたら通常運転だとしても、テレビを作っている人間側からすると、安全速度を、ちょっと超えていますよ、みたいな」と、テレビとの折り合いの付け方に難しさを感じていると吐露した。
さらに、カメラは在日コリアンが多く住む大阪の鶴橋や韓国・ソウルに足を運び、慰安婦問題について議論したり、ネタを披露する村本にも密着。一方で、コロナ禍でライブが次々と開催できなくなった村本が、マネジャーを前に「居場所がなくなる」などと不安を吐露し、泣きじゃくる声も収録。父一彦さんと飲む中で、ぶつかり合い「お笑いで世界を変えられる。お笑いが世界で1番、最高の仕事だと思っているから」と言い放った後、帰りの車内で涙を拭う姿も映し出した。嫌われ芸人、炎上芸人などというワードとは対極にある、1人の人間としての村本が映画の中には存在する。
だからといって、この映画で描かれた村本も、1つの一面に過ぎないのだろう。劇中に、ウーマンラッシュアワーが熊本地震の被災地で漫才をしたシーンがあるが、劇場で販売されているパンフレットに寄稿したテレビ朝日の郭晃彰氏は、文章の中で「全然違う。村本大輔はうそつきだ」「そして、またこのドキュメンタリーもうそつきだ」とつづっている。そうした批判的な寄稿文を、パンフレットに掲載すること、また批判した同氏も「彼はメディア(媒介)になる人物だ」「たまにあの刺激が欲しくなる」などと、ある部分においては評価しているのも、村本という人間の、また1つの面なのだろう。
7月6日に都内のユーロスペースで行われた初日舞台あいさつで、村本は米国のお笑いで発見があったかと聞かれると「芸人も芸人で、みんな、イスラエル、パレスチナ、バイデンだと、みんなネタにしている」と政治も、当たり前のように笑いのネタになっていると紹介。「俺なんか、日本の漫才で(政治を)ネタにした時、あいつは思想家、活動家とか、偏りすぎとか色をつけられる。米国では逆にやってない、考えを持っていないヤツの方が浮いていたりする」と、いまだ日本では政治を笑いのネタにはできないと、改めて指摘した。そう言い放つ顔は、嫌われ芸人、炎上芸人とされる、村本のそれだろう。
少なくとも記者は「アイアム・ア・コメディアン」を見て、村本への印象に新たな1ページが書き加えられた感覚を覚えた。話を聞いてみたいと、興味が湧いたのも、偽らざる本音だ。【村上幸将】



