フジテレビ問題が騒がれ始めた今年早々から、おじさん記者の頭の中でヘビーローテーションしている曲がある。フラチナリズムというバンドの「涙の雨がやむ頃に」という曲だ。

先に断っておくが、今回のコラムはフジテレビ問題とは全く関係なく、バンドの宣伝でもなく、単なるおじさん記者が共感してほしいという願望の話だ。

「何それ?」「その曲知らない」という声が聞こえてきそうだ。実際、バンドには申し訳ないが、バンド名および曲名を聞いて「いいよね!」となった方は相当のマニアだと思う。

この曲がリリースされた2016年、同バンドを何度か取材した。あれから約8年がたつが、1度も取材していないし、正直、その存在さえ忘れていた。

だが、なぜかフジテレビ問題で「世の中すさんでるな」と思ったある日、ふと同曲のサビメロが脳内に浮かび上がってきたのだ。「あれ? この曲、何だっけ?」。おじさん記者の悲しい現実としてよく直面するのが、思い出せないということ。「あれ、あれ! ほら、あれだよ、あれ!」は日常茶飯事だ。

サビメロは流れてくるが、歌詞も曲名も思い出せない。そんな状態が数日続いたある日、ふと歌詞を思い出した。すると、まるでせきを切ったように当時の情報を思い出した。

当時、中野サンプラザでワンマンライブを行うために、拠点としていた八王子の飲み屋で流しをし、リクエストに応えたのちに自分たちの曲を歌う地道な活動をしていた(と思う)。その場で、「今度中野サンプラザでワンマンライブをやりますので、良かったらチケットも」と手売りをしていた(と思う)。おじさん記者もプロを夢見たバンドマンだったので、その苦労に胸を打たれたことを覚えている。

そこで、当時の取材ノートを引っ張り出してみると同曲は、東日本大震災をきっかけに誕生した曲だった。「ずっと歌詞が書けなかったけど、震災をきっかけにすっと書けた」のメモが残っていた。

突然おじさん記者の脳内に浮かび上がってきた同曲は、約8年たっても脳裏に染み込んでいた。「名曲はいつの時代も色あせない」。そんな言葉も耳にするが、もしそうだとすれば、おじさん記者にとって同曲は間違いなく名曲だ。

ただ残念なのは、この話をしても、周りに共感してくれる人がいないことだ。おじさん記者の心に染み込んだ「涙の雨がやむ頃に」に少しでも興味を持っていただいた方は、YouTubeにMVがアップされているのでぜひ聞いてみてください。【川田和博】