今月8日に東京・六本木バードランドで行われた「吉川美代子 Autumnジャズライブ2025」を見に行ってきた。元TBSアナウンサーの吉川美代子さん(71)がジャズを歌った。ギター、ドラム、サックスもTBS出身の方々といい、さすがTBSというか、元同僚だ。ピアノ、ウッドベースにプロを頼んで「イッツ・クレイジー」「晴れた日に永遠が見える」「マイ・フーリッシュ・ハート」など全19曲を熱唱した。

「楽しくなければテレビじゃない」という流れに乗って、ヘラヘラと女子アナインタビューを生業にしてきた記者にとって、吉川さんはいつも背筋をピンと伸ばさせてくれる存在だ。「女子アナという職業はない、女性アナウンサーです!」。その言葉が、取材に臨む姿勢を変えてくれた。

マイクを握る吉川さんの表情は晴れやかだった。かつて「TBSの松坂慶子」と言われた艶やかさを振りまいていた。好きなことをできる喜びに満ちあふれていた。音楽教師だった父親の影響を受けて、中学時代からジャズに親しんだ。

TBS時代は女性アナウンサーとして1983年(昭58)に「JNNおはようニュース&スポーツ」でTBS初の女性キャスターになった。84年からは平日夕方の「JNNニュースコープ」のキャスター。当時「女にニュースを読ませない」という風潮もあった中で、道なき道を切り開き、報道番組をキャスターとして仕切り続けた。01年(平13)から14年までは、TBSアナウンススクールの校長として後進を育成した。

その一方で、TBSのジャズ好きが集まって社内バンドを結成して、ボーカルとして活躍した。14年の定年退社後は、フジテレビのバラエティー「全力!脱力タイムズ」でも活躍。新たな一面を見せている。

来年8月に会社を卒業予定の記者も、現在はレームダック状態の取材活動をしながら第2の人生を考えている。「アイドル歌手としてスカウトされる」という夢は、とうの昔に消え去っている。ジャズとはいかないが……と考えさせられる、吉川さんのまぶしい姿だった。【小谷野俊哉】