11月23日まで東京・国立新美術館で開催中の日本最大級の総合美術展「第118回日展」で俳優大沢たかお(57)の約2メートルの巨大な肖像画が展示されている。描いたのは画家の中島健太氏(41)。20代で「日展」の特選を2度獲得して最年少会員となり、描く度に作品が全て売れる“完売画家”としても知られる画伯だ。これまでも黒柳徹子やベッキー、佐々木希、白石麻衣ら女性芸能人を描くことは多かったが、初の男性芸能人に挑戦。「どうせ描くなら、憧れていて率直に会ってみたい人を描きたかった」と“ほぼ等身大”のキャンバスに込めた思いを聞いた。

会場を進むと、重厚感たっぷりの、ひときわ目の引く絵画が目の前に飛び込んでくる。「大沢たかおを描いたんだな」と一目で分かるその作品の前で、多くの来場者が足を止め、写真を撮っていた。絵画の中の大沢は、「国内にとどまらない空気感がある」(中島)と100年以上前につくられたアンティークのスーツケースに座り、「生きざまがピュアだと思ったから」と白いバラを持って佇む。120号のキャンバスから静かに前を見つめる姿は壮観で、引き込まれそうになる。

「こうして作品を目の前で見るとまた印象が変わりますよね?これが会場で直接見てほしいなと思う理由なんです」と中島は言う。タイトルは「忘れえぬひと」。ロシアの画家、イワン・クラムスコイの名画「忘れえぬ女」から着想を得てつけた。「100年以上前のものですが、僕の中でトップ5に入る大好きな作品なんです。自分も絵を描くときは、100年後に残っているかを意識しています。僕自身もそうした作品に感動しますし、そこまでに歩んできた絵の生涯も気になります。絵画は誰かに愛され続ければ100年という時を超える。それを目指したいですし、今回の作品も100年後にも誰かの胸を打ってくれたらいいなと願っています」と思いを込めた。

かねて大沢への憧れの念があり、30代のころから「ぼんやりと描きたいと思っていました」と語る。今年3月に初対面し、これまでの生い立ちや仕事観などのインタビューを経て、都内のスタジオで写真を撮影。それをもとに9月から約1カ月で仕上げた。

「いつもそのやり方でやることが多いのですが、ただ写真を写すだけだと表面的なものになってしまうので、描く前にお話を聞く時間を設けていただいています。芸能人の方はどう切り取っても絵になるので、逆に切り取り方が難しいんです。まずはそれが大沢さんだと思ってもらうことが重要なので似せること、そして会話した時間やこれまでの出演作を見てイメージを作って近づけていく。今回はオーラと分厚さ、重厚感を意識しました。色やコントラストの強さ、絵としてはあまり明るくない暗めな作品にして内側の世界の豊かさまで描けたら良いなと思って仕上げました」と振り返った。

作品には中島氏のサインのほか、完成時に見せた際に入れてもらったという大沢のサインも刻まれている。中島はオファーを受諾した際の大沢サイドの様子について「お仕事を受ける基準は『ドキドキできるか』ということと言っていました。プロの画家のモデルになることは初めてだったそうで『バラと一緒に撮ったの初めてかも』と言っていましたね」と明かし「こんなに大きな作品になるとは思っていなかったみたいで、見せた時は『俺よりかっこよくないか』とも言っていただきました。お忙しい中で受けて頂いて、本当に感謝しかありません」と話した。

国立新美術館での「日展」は23日まで。今作も「日展」への出展ありきで動いたものだ。展覧会を盛り上げたい思いもあったといい「今はネット上でいくらでも絵が生成できたりもします。こんな時代だからこそ油絵と向き合う時間をみなさんにつくっていただいて、良さを感じてほしい。『日展』は彫刻、工芸美術、書など幅広く展示されていますし、いい作品がたくさんあります。ぜひ多くの方に見て頂きたいです」と願った。【松尾幸之介】

◆中島健太(なかじま・けんた)1984年(昭59)12月10日生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。大学3年時にプロデビューし、現在までに制作した作品は1000点を超える。女性をモデルにした写実絵画を得意とし、09年と14年に日展最高賞である特選を受賞。白日会・日展会員。メディア出演も多く、テレビ東京「ひねくれ3」、TBS「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」や「NEWS23」、テレビ朝日「徹子の部屋」などに出演。TBS「グッとラック!」やTOKYO MX「バラいろダンディ」ではコメンテーターとして、フジテレビ「元彼の遺言状」では絵画担当としても活動した。21年には著書「完売画家」も出版。