ロックバンドHOUND DOG大友康平(70)が、今年も東京(7~8日、日本青年館ホール)大阪(20~21日、東大阪市文化創造館)仙台(4月29日、仙台銀行ホール イズミティ21)で「HOUND DOG LIVE2026 ROLLING 70“ROCK’N’ROLL GOES ON”」を開催する。古希を迎えてもエネルギッシュに歌い続ける大友が、音楽との出会いや思いなど半生を振り返った。【阪口孝志】

 

元日に70歳になった。「考えないようにしてます」と笑う。60歳を迎えたときは「還暦」という言葉がガーンと重かったというが、古希は「それほどのものでもない」。毎年、いろんなところでエポックメーキングし、まい進してきた。「そうすると、一瞬一瞬をすごく熱く生きてるような気がするし、格好つけて言えば、充実した人生なのかな。70になってまだ、ロックンロールショーを続けることができるのは幸せ者ですね」

ライブと言えばHOUND DOGと言われ、年間150本ものツアーをこなしたこともあった。近年は3~4月に東京、大阪のツーデイズ、そして、ふるさと仙台でロックンロールショーを行う。「今は1年150よりも4~5本の方が貴重って言ったらおかしいけど、自分の中での気持ちの高揚感がある。たった5本かもしれないけど光り輝いている。常連の方、久しぶりの方、初めての方、足を運んでくれる全員に納得してほしい、全員が熱狂してほしい、思い出に残ってほしいと言う気持ちで」。ファンのためにベストオブベストを尽くし、「自分の中の王道と思ってやっている。セットリストが一緒でも、その日の体調や表現で同じことは絶対にない。それがライブの魅力であり醍醐味(だいごみ)だと思いますね」とライブにかける思いは今も変わらない。

70年で特に印象深かった思い出を聞くと、「話しきれない。一晩ください」とおどけながらも、印象に残る出来事を2つ挙げた。

「日本武道館は50回やりましたけど、1番最初が一番覚えてますね。ヒット曲もなくて、仙台から東京に出てきて事務所を作って、『何が何でも武道館をやるぞ』と。ヒット曲も名声もないけど、とにかくお客さんに来てくれと。それを言い続けて、1983年11月2日の武道館は忘れられない。一人で何十枚もチケットを売ってくれた子もいたし、自分の中でも『お祭りごとは最初で最後だろうな』と思ったのはよく覚えてますね」。

もう1つが86年12月から88年3月まで1年4カ月で207本開催した「Bloods LIVE」だ。

「多分記録じゃないかな。最終日が東京ドームだったんですよ。東京ドームもできたばかりで、一つのバンドのワンマンショーとしては最初だったんですよ。ところがね、207本目でしょ。疲れちゃって疲れちゃって。今日で終わるんだなっていう安堵(あんど)感が強くて一切記憶がなくて、とても残念です」

音楽にあふれる環境で育った。フランク・シナトラとパット・ブーンが好きでアルバムを聞いていた祖母。父親はジャズ、祖父は演歌。将来、自分が歌手になる発想はなかったが、「日清ちびっこのどじまん」の景品のステレオがほしくて予選を受けに行く少年だった。母親の実家でいとこのお兄さんがギターを弾いてている姿に「かっこいいな」とあこがれ、グループサウンズを教えてもらった。「ザ・タイガースの『モナリザの微笑』とかね。直接的にはそのお兄さんの影響が大きいですね。僕らの世代って幸せだなって思うのは、ビートルズもローリング・ストーンズもレッド・ツェッペリン、ディープ・パープルも全部オンタイム。歴史の話じゃなくて、その都度、ラジオのチャート番組で聞いてた。あらゆるタイプの振り幅の広いアーティストをみんな聞いてきて幸せだった」。

キャロルの矢沢永吉が大衆に切り込んでいく姿にあこがれた。「デビュー曲の『ルイジアンナ』なんて聞いたときは衝撃でしたね。格好良かったし、革ジャンリーゼントでいわゆる不良。でも、歌ってる内容は甘いラブソング。かっこよかった。藤井フミヤさんやヒムロックなんかもそうですけど、僕らの世代は全員キャロルの洗礼を受けてます。今聞いてもわくわくします」と目を輝かせた。

矢沢が昨年の紅白歌合戦で健在な姿を見せる一方で、井上陽水のように半分リタイアしたミュージシャンもいる。

「陽水さんの場合は印税で相当もうかってるから、無理してライブしなくてもいいでしょ」と笑いながら、「僕はシングルでヒットを書いたわけでもないし、アルバムの中で自分の感じていることを詩にして曲にしているだけで印税がたくさん入ったタイプじゃないけど、本当に単純に、ロックンロールの歴史をたどっていったら、大ボスにエルビス・プレスリーがいるわけですね。世界でリーゼントが一番似合うのはプレスリー。あの金髪が崩れてもかっこいい。そういうロックンロールのビジュアル、音楽を最初に聞いて電気が走った感覚がたまらなくてずっと続けてるだけ。こんなに楽しい、こんなに興奮できるってことが原動力できているだけ。分かってほしいですよね。こんなに気持ちいいもんないですよ? チャック・ベリーが特許出願してたら大変なことになってますね」

そう話した上で、「立って歌うだけなら80歳までできるかもしれないけど、跳んだり跳ねたり走ったり、マイクスタンド振り回してやるステージがいくつまでできるのかなっていうのは、楽しみでもあり、挑戦でもあり、生きる糧でもあるかもしれないですね」と“生涯現役”に意欲を見せる。

昨年、メジャーデビュー45周年を迎えた。今のミュージックシーンについては「ヒップホップってのが日本に浸透すると思わなかった。ブルースと同じくらい黒人の苦しみ、貧困、差別を痛烈にフレーズも入れても、本当の大貧困みたいなのが日本はそれほどでもないと思っていたから、絶対に流行らないと思った。でも、日本人はファッションとして取り入れるのがすごいうまい」

人気ロックバンド「King Gnu」のライブをめぐり、SNSで「周りの合唱がうるさすぎて本人の声が聞こえない」との投稿に対し、ボーカル、キーボードの井口理が肯定したことが賛否を呼んだ件については「客席にいたことがないんで」とジョークを飛ばしながら、「バラードは絶対歌わないかな。聞こうとする。うちの歌は歌うのはないかな。サビに合わせて拳を上げたりとか」

HOUND DOGのライブでは合唱にふさわしいシーンが少ないとした上で「昔、山下達郎さんが『歌うんじゃない』っていうのもありましたし、矢沢さんは制限してるし、どうなんでしょうね。ただ、King Gnu、彼らはとても勇気があると思いますよね。結局は1人ひとりのモラルになるのかな」と話した。

今のハイトーンボーカルが人気のミュージックシーンは、低く力強い声、シャウトが魅力の大友にとって「僕の中で、Mrs.GREEN APPLEさんとかOfficial髭男dismさんとか、男のキーと思えないキーで歌えるのがうらやましいし、信じられない」というが「僕らは太い声、ロッド・スチュワートが永遠のアイドルで彼の声が史上最高、最強だと思ってる」

楽器に対するあこがれからバンドを組み、レコード会社と契約してデビューという自分たちの時代とは様変わりし、「昔は音楽に対しても形式美、流れみたいなものもあった。今はイントロもないけど、イントロがあって、Aメロがあって、サビに行くってのも様式美ですよ。でないと、ロックじゃないっていうのもどこかにある。ここまで多様化してると自分はついていけないところはありますよね。だから、正直、今の音楽はぶっちゃけよく分からないですね」と素直な心境を吐露。

その一方で、「でも、それはそれで多様化の時代だからとても面白い。残っていくものは残っていくし自然淘汰(とうた)される。10年後、どういう音楽の世界に変わっているかは分からないけど、自分は自分が体験してくぐってきた音楽のすばらしさ、魅力を1人でも多くの人に伝えたい、それだけですね」。時代が変わっても伝えたい思いもまた変わらない。今後もロックンロールショーで魅せ続けていく。