山々が少しずつ色付き秋たけなわ、と言いたい時期であるのにこの暑さ。観測史上最も遅い真夏日も記録され、地球温暖化の進行を実感する。例年と異なる異常気象は世界各地でも見られ、これから夏を迎える南半球でも気温は上昇傾向と予測されているそうだ。
今年の夏休み、先輩にお声がけをいただき、冬のオーストラリアに出掛けてきた。朝晩は冷え込むものの、日中の暑さは日本を上回るほどで、強烈な紫外線にジリジリと焼かれてしまった。
先輩のお宅はゴールドコーストの華やかな海辺から西へ車で1時間ほど行った、国立公園の中のタンボリンという小さな町の山荘だった。庭から眼下を見下ろすとユーカリの森が広がり、野生のコアラが上がって来る。黄色いトサカを立てた真っ白なオウムが飛来し、玄関脇に生えているマカダミアの実をガリガリとかみ砕き、美しいクジャクが下に落ちた実をついばむ。
庭にはパッションフルーツやアボカドが実り、敷地を出れば道路脇にワラビーやカンガルーたちが当たり前のように立っていて、こちらを見ている。夜になれば空に輝くのは南十字星、サザンクロス。楽園とはきっとこのような場所を言うのだろう。
実際、近くの町を歩くと目につくのはスピリチュアル系のお店の数々。パワーストーンや様々なお守り、タロット占いやオーラ診断。訪れた地元のギリシャ料理屋の女将(おかみ)さんは自分もヒーリングパワーを持っているとのことだったが、この地域は先住民の時代から神聖なエネルギーが満ち満ちているのだと熱く語ってくれた。
昨今、日本でも世界でもパワースポット巡りやスピリチュアルな旅への関心が高まっていると聞いていたが、私もこの地にお邪魔することで心の安らぎを得て、元気のもとをもらい、気持ちがリセットされた気がした。これぞ「開運・スピ活」。
旅の最後に生まれて初めて熱気球に乗った。夜明け前の真っ暗な中、気球はゆっくりと5000フィート(約1524メートル)の上空へ。やがて東の空が徐々にあかね色に染まり、朝日がゆっくりと顔をのぞかせると、足下には見渡す限りの雲海が広がっていた。
人は大きな自然の営みの中で生かされている小さな存在なのだ、と当たり前のことを静かに思い出させてくれる雄大な眺めだった。
気球は風に流され、降りた地点は牧場のど真ん中。草を喰(は)む牛たちをかき分け、ふんを避けながら迎えのバスに乗り込み、満足のため息をついた。



