二度あることは三度あるー。ちょうど1年前、岸田政権の閣僚の「辞任ドミノ」が起き始めた時、永田町でささやかれていたフレーズだ。このフレーズを1年ぶりに、再び耳にする事態になるとは思わなかった。「辞任ドミノ」の悪夢が、1年ぶりに岸田文雄首相にのしかかろうとしている。
思えば昨年の「辞任ドミノ」は大臣が中心だった。8月の内閣改造後、旧統一教会との関係をめぐり国会で野党の追及を受けていた山際大志郎・経済再生担当相が、岸田文雄首相が更迭をずっと否定する中で結局、更迭されたのに端を発し、死刑執行をめぐる失言をした葉梨康弘法相が続き、さらに「政治とカネ」が取りざたされた寺田稔総務相も辞任。1カ月もたたない間に3人の閣僚が相次いで職を追われる(事実上の更迭)事態にになった。岸田首相の求心力は一気に低下し、内閣支持率も下落。年末にはやはり「政治とカネ」が指摘され続けた秋葉賢也復興相も事実上の更迭され「辞任ドミノ」が年の瀬まで4人続く、なんとも締まりのない年末になった。
一方、今年も9月の内閣改造で起用された山田太郎文科政務官が10月26日に不倫問題で、柿沢未途法務副大臣が地元の東京・江東区長選をめぐる公選法違反事件への関与で同31日に、相次いで辞任。スピードは昨年のドミノよりも速い。さらにここにきて、税理士資格を持つ神田憲次財務副大臣が、自身が代表取締役を務める会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納し、4回も差し押さえを受けたことを「週刊文春」の報道を受けて認め、辞任は不可避との見方が強まっている。
取材した野党議員は「2人ではまだドミノといえないが、3人なら立派なドミノ。でも神田副大臣の辞任のタイミングが意外に遅い。切って『ドミノ』と言われたくないから、岸田総理がもし神田副大臣を守ろうとしているなら論外だ」と、批判する。別の政界関係者は、昨年の「閣僚辞任ドミノ」より、今年の政務三役の辞任&辞任危機のほうが、より深刻だと指摘する。「文科政務官が女性問題で、法務副大臣が公選法違反事件への関与で、辞任した。いずれも担当分野での問題発生だ。神田氏は、税理士資格を持つ財務副大臣なのに、よりによって税を滞納。その前に辞めた2人よりさらに悪質だ。普通の感覚なら『一発アウト』なのだが」。
政権浮揚を狙って行った内閣改造で起用された政務三役が、浮揚どころか政権の足を引っ張るパターンが、岸田内閣では定着してしまった。辞任ドミノは、何か明確な理由があって起きるものではない。今回は不倫報道の山田氏の辞任が発端だが、柿沢氏の問題がそれに関連して起きたわけではなく、神田氏の問題も同様。昨年も、山際氏の後に辞任した葉梨氏は想定外の失言が理由で、そこにかねて政治資金の問題がくすぶっていた寺田氏、秋葉氏が続く形になった。
「一寸先は闇」といわれる永田町では、悪い方向にいく時は、想像もしないような悪い方向に流れが進んでしまうこともある。そんな悪循環にはまってしまっている今の岸田政権は、「政治とカネ」をめぐる閣僚の辞任や交代が5人続き、途中挟んだ参院選の惨敗もあって退陣に追い込まれた第1次安倍政権の流れと、似ている様に感じる。当時も、5人のうちの1人は失言が理由の辞任だった。
増税イメージがついて回り、分かりにくい減税政策や国民への説明力不足での岸田首相は、模索してきた年内の衆院解散・総選挙を見送る方針だといわれている。もし第1次安倍政権のように日程が決まった大きな選挙があった場合、厳しい結果になった可能性だって否定できない。
与党関係者からも「今の政権は、増税イメージや減税政策、神田氏の税金滞納など、お金がらみの問題が多すぎる。これでは今、選挙ができる環境にない」との声を聞いた。政権には、加藤鮎子こども政策担当相や武見敬三厚労相ら「政治とカネ」が指摘されている閣僚がいる。政務三役に新たなスキャンダルが出ないとも限らない。
「ポスト岸田」の不在や野党の脅威感のなさなどで、ピンチになってもなんとなく乗り切ってきた岸田首相だが、「二度あることは三度ある」の辞任ドミノが2年連続で起きようとしている「珍事」(野党関係者)に直面。これまでとは比べものにならないピンチであることは確かだ。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


