6月23日の通常国会閉会から1カ月。この間、いろんな意味で混乱した東京都知事選が行われ、小池百合子知事の3選で幕を閉じた。そして今、日本の政界は、秋の2大決戦に向けた静けさの中にいる。
「2大決戦」とは、9月にともに予定される自民党総裁選と立憲民主党の代表選。自民党総裁の岸田文雄首相、立憲民主党代表の泉健太代表の両党トップともに、今の地位にとどまり続けられると断言できる状況にはない。
岸田首相は支持率低下に歯止めがきかず、裏金事件の再発防止に向けた政治資金規正法の改正にこぎつけたが、どこまでも「ザル法」批判がつきまとう。その後も、安倍派所属の堀井学衆院議員の公選法違反疑惑による強制捜査があり、裏金イメージの払拭(ふっしょく)ができない状況。新たに表面化した防衛省の不祥事も今後、首相を追い詰めるとの見方が強い。一方、次世代リーダーへの期待から2021年11月に代表になった泉氏も再選が安泰という雰囲気ではなく、小沢一郎衆院議員が「泉おろし」に言及するなど、不穏な空気も漂う。
自民党総裁選に関して永田町関係者に話を聞くと、岸田首相自身は、再選出馬に強い意欲を持っているという。ただ党内では、菅義偉前首相や麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長といった首相との距離が指摘される人物に近い議員らから、公然と退陣を求める声が出ている。首相周辺は「意に介していない」(関係者)という声も聞いたが、「党内政局」が始まりつつあることは、報道を通じて有権者にも伝わりつつある。今の自民党が置かれた立場からして「自民党の総裁選なんだから自民党の論理でやればいい」という内向きな考えは、今回はなかなか通用しにくいかもしれない。
ところで、今年は辰(たつ)年。政界のジンクスでは辰年は「政変の年」といわれる。政界に関するジンクスは多々あるが、これまで戦後に6回訪れた辰年のうち、4回で首相が交代している。
1964年(昭39)は最初の東京五輪が開かれた年だが、池田勇人首相が病気療養のため辞任し、佐藤栄作首相が就任した。次の1976年(同51)には、ロッキード事件のさなか「クリーン三木」といわれ政治改革を目指しながら党内対立により衆院選で敗れた三木武夫首相から、福田赳夫首相に交代した。
ちなみに福田氏は、その2年後の自民党総裁選に再選をかけて出馬したが、現職の自民党総裁で総裁選に敗れた、唯一の人物。今回、もしかしたら岸田首相が同様の事態に陥るかもしれないとする声もあり、最近、話題にのぼる人物でもある。
次は2000年、小渕恵三氏が脳梗塞で倒れ、森喜朗氏が首相に就いた。就任をめぐる経緯の不透明さも指摘され、支持率も振るわず、森氏は不人気だった。次に首相を継いだ小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」と言って総裁選を圧勝。約5年5カ月の長期政権を築いた。
そして前回の2012年は、旧民主党政権最後の首相となった野田佳彦氏が党首討論で衆院解散を仕掛けたが、衆院選で自民党に惨敗。安倍晋三首相が返り咲いた。第2次安倍長期政権が続き、今の岸田政権に至っている。
辰年に首相交代がなかった2回のうち1988年は、自民党の裏金事件と比較して語られることも多いリクルート事件が発覚。その翌年、竹下登首相は辞任した。また、首相交代が起きた1976年にはロッキード事件が起きている。政治を取り巻く状況、そこで首相が追い込まれていく構図も、辰年の特色なのかもしれない。
戦後7回目の辰年となる今年は、「ジンクス」の行方はどうなるのだろうか。前述した東京都知事選では、前安芸高田市長の石丸伸二氏(41)が、一躍「時の人」となった。40代で、選挙ではSNSとリアルの街頭演説を「できることは全部やる」という貪欲さで聴衆を引きつける、新しいタイプが登場。自民党総裁選は自民党内の選挙ではあるが、これまでのような「自民党の論理」に凝り固まった形の総裁選となれば、国民にどう映るのか…。この点を気にしている人は、少なくないとも聞いた。「表紙のすげ替え」批判はあっても、中堅や若手の擁立論を臨む声が出ているのも、そんな背景も影響しているのかもしれない。
5度目の「辰年ジンクス」は起きるのか、それとも外れるのか。8月のお盆が明ければ、岸田首相の動向を含め、スタートラインに立つ顔ぶれが見えてくることになる。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


