小泉進次郎元環境相(43)が6日に、自民党総裁選(12日告示、27日投開票)への出馬を正式に表明した。台風10号の日本の影響で当初の予定から1週間遅れとなったが、記者会見場となった国会近くのシェアオフィスの一室には150人を超える報道陣が集まり、昼前のワイドショーでも生中継されるなど、高い関心が注がれる形になった。
この記者会見で話題になったのが、フリーランス記者による質問。「進次郎さんがこの先、首相になってG7に出席されたら、知的レベルの低さで恥をかくのではないかと、みなさんが心配している」「それこそ日本の国力の低下になりませんか。それでもあえて総理を目指されますか?」と挑発するような言い方で、進次郎氏の総裁候補としての資質をただした。この場で具体的根拠に触れないまま「知的レベルの低さ」という痛烈な言葉だけが出てきたのには、その場にいて驚いた。一方、進次郎氏は「足らないところが多く、完璧ではないことも事実」と認めた上で、質問した記者の名前をたずね「このようなご指摘を肝に銘じ、『あいつ、ましになったな』と思っていただけるようにしたい」と、切り返した。
その時、同じような質問を、環境相就任会見でも受けたとして「2年間大臣を務めた後、そのベテランの記者さんとは、退任の時に花束を頂く関係になった。(質問した記者とも)そうなれればうれしい」とも切り返し、フリー記者も最後は「勉強してくださいよ」と矛を収める形になった。
この時、進次郎氏が言及した、かつて受けた同じような質問というのは、進次郎氏の地元で当時、営業運転に向けた流れが進んでいた横須賀火力発電所に関するものだったように思う。就任会見では、環境政策に明るいとは言いがたい進次郎に対し、環境政策の知識が深い記者からの質問が次々浴びせられた。「ベテランの記者さん」には「あなたは気候変動だ、なんだ、ときれいごとを言っていますが」と指摘され「環境アセスは終わったが、東京電力に(建設を)やめたらどうだと。このぐらいのことを言って、初めて価値のある会見だと思うんですよ」と、ただされた。就任直後の進次郎氏は「地元のみなさんの気持ちを決して無駄にすることがないような環境行政の推進に、日本全体、世界全体としてプラスになるように、やっていきたい」などと応じるのが、精いっぱいだった。
進次郎氏が語った「ベテランの記者さん」とは、環境新聞社の小峰純記者(75)。進次郎氏が環境相時代、閣議後会見に取材に出向くと、環境政策から政局の話題まで幅広い内容の質問を時に厳しく、時に愛情持った様子で投げかける小峰さんと、時に厳しく、時に柔和な表情で答える進次郎氏の姿があった。小峰さんとの質疑は、緊張感漂うやりとりになることもあったように覚えている。
その小峰さんは7日、進次郎氏が総裁選出馬表明後、初めて街頭演説を行った銀座四丁目交差点にいた。気温35度の中、進次郎氏の約10分間の演説を見守っていた。その小峰さんに、進次郎氏がフリー記者とのやりとりの中で、自身とのエピソードを引き合いにしたことについて聞くと「うれしかったですよ」と、口にしていた。「(質問した)フリーの記者の名前を聞いてあげたり、ああいうところは『ジジ記者殺し』というか(笑い)。ぼくも就任会見で、籠絡(ろうらく)されましたから(笑い)。フリーランス記者も、籠絡されるのではないですか?」と、ちゃめっ気たっぷりに語った。
大臣会見では厳しい追及もしていた小峰さんだが、現在地の進次郎氏について「『ポエム』とか『政策がない』といわれるが、小泉さんは戦略的に環境政策をやっていた。けして政策がないというわけではない」と分析した。「『ポエム政治家』といわれるが、私は大いに結構だと思う。政治家たるもの『ポエム』を持たないと国民には伝わりません」。
「知的レベルの低さ」という言葉で挑発されながら、出馬会見という場でフリー記者との決定的対立はせず、その場はかわし切った進次郎氏。小峰さんだけでなく、その「人たらし」ぶりを語る人は結構多い。小峰さんは総裁選の行方について「(進次郎氏は)勝てそうな気がします」と期待も示していたが、9月12日の総裁選告示後は、候補者間で本格的な論戦が始まる。議論の場で、フリー記者の挑発とはまた違った形のやりとりに臨むだろう進次郎氏は、どんな対応力をみせるのだろうか。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


