地下鉄、松本両サリン事件などオウム真理教による一連の犯行を首謀したとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われ、死刑が確定した松本智津夫死刑囚(63=教祖名麻原彰晃)ら7人の刑が6日、東京拘置所などで執行された。95年5月の松本死刑囚の逮捕から、23年。犯罪史上類を見ない多くの凄惨(せいさん)な事件を主導した「教祖」は、最後まで事件の詳細を語らなかった。
オウム真理教が引き起こした事件に巻き込まれた遺族や被害者は、元教祖松本智津夫死刑囚らの死刑執行を厳粛に受け止めつつ「もう真実に迫れない」と真相解明の道が閉ざされたことに悔しさもにじませた。
地下鉄サリン事件で東京メトロ霞ケ関駅助役だった夫一正さん(当時50)を亡くした高橋シズヱさん(71)が6日、都内で記者会見を行った。
松本智津夫死刑囚の刑執行については「突然でビックリした」としながら「その時が来たな。それしかありません。当然だと思う」と語った。事件から23年以上が経過し、一正さんとシズヱさんの両親は既に他界している。「死刑執行のニュースを聞くことができなかったのが残念だった」。
7人の刑執行が同日に行われたことには「えっ、と思った。少し意外でした」。そして、松本死刑囚以外の6人の名前を聞いて「動悸(どうき)がした」という。今後のテロ対策のためにも、6人には多くのことを語ってほしかったとして、「専門家も死刑囚に対して、いろいろなことを聞いてほしかった。それができなくなってしまったという心残りがある」と残念がった。
最後には「麻原の死刑は当然。こんなに長く待たされた」とあらためて語り、「人生の3分の1がオウムに振り回された。それを考えると悔しい思いがする。悔しい…」と涙ぐんだ。そして「いろいろな人がこの日を待っていた。1つの区切りだと思う」と続けた。
地下鉄サリン事件は1995年(平7)3月20日に発生。13人が死亡、6000人以上の被害者が出た。シズヱさんは「地下鉄サリン事件被害者の会」の代表世話人を務めている。【松本久】