政府は海外との往来を10月以降、順次拡大する方針を固めた。国をまたぐ移動が活発になることで経済が活性化するメリットがあるが、問題点や新型コロナウイルス感染再拡大への不安もある。

航空・旅行アナリスト鳥海高太朗氏(42)に、出入国の現状や今後の課題を聞いた。

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世界的に新型コロナウイルス感染症が猛威をふるう中で、海外からの入国に不安材料が多い。現在、海外からの帰国者には、14日間の待機や到着空港から滞在場所までの移動に公共交通機関を使用しないこと、14日間は保健所等による電話やメール、LINEなどでの毎日の健康状態確認などが要請されている。

鳥海氏は帰国者の現状を「帰国後、交通公共機関を使って自宅に戻ったり、LINEで健康状態をやりとりするだけでいいので、14日間待機せず、職場に行く人もいる。検査やチェック体制が甘い」と指摘。「日本人に対してもチェックが“ザル”なのに、今後、外国人に対してきちんとできるのか。何よりもまず、一層の厳重な水際対策が必要」と懸念している。

感染拡大防止の観点から、外国人入国者のマスク着用もポイントになる。海外では「マスクは病気の人がするもの」との認識が根強く、マスク着用に抵抗感を持つ人が今も少なくない。

鳥海氏によると、海外では公共交通期間で着用を義務付ける国もあるが、そのほかの場所ではマスクを着用しない人が多いという。「コロナ感染拡大防止の観点から、どこまで外国人入国者にマスクを着用してもらえるかも課題」と話す。

海外渡航者は限られるが、移動計画にも注意が必要だ。現在、EU圏内への入国は14日間の隔離や待機が不要とされているが、最終判断は各国に任されているため、フランスは入国可能だが、ドイツは入国不可などまちまちだ。鳥海氏は「海外で国をまたぐ移動をする場合は要注意です」と話している。【近藤由美子】

○…政府の観光支援事業「Go To トラベル」への東京都発着旅行の追加が10月1日から開始。同時に、旅行代金の最大15%相当が付与される「地域共通クーポン」利用も始まる。鳥海氏は「クーポンを取り扱う店がどこか旅行者に周知されておらず、取扱店側も精算方法など仕組みが理解できずに困っている」と指摘する。

また、「Go To トラベル」と連動し、東京都民に対する都の補助事業が10月下旬から開始する。事業に参加する旅行会社の商品が対象。「都の予算は22億円。政府の『Go To』予算約1・4兆円に比べれば、当然予算は限られている」とし、都の事業は開始後早期終了の“争奪戦”になる可能性も示唆した。