政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長(71)は4日、衆院厚生労働委員会で五輪開催の可否をめぐり野党から集中質疑を受けた。立憲民主党の山井和則氏からは「一番、国民が不安に思っているのは、やるか、やらないか」と重ねて食い下がられたが、この段階での明確な答弁は避けた。その上で今後、現状のコロナ禍における五輪開催へ向けた緊急提言を行うことを明らかにした。尾身会長は「政府は(緊急事態宣言解除の)20日以降に(五輪開催の可否を)決められる、と聞いている。(提言は)その後だと意味がない。なるべく、それよりも前に我々の考えを伝えたい」と断言した。

現況での五輪開催について、尾身会長は2日に「今の状況で、やるのは普通じゃないわけだから、やるのであれば、開催規模をできるだけ小さくして管理体制をできるだけ強化するのは主催者の義務だ」と政府、組織委員会に突きつけ、波紋を呼んだ。そして、この日は「本当にやるんであれば、緊急事態宣言の中での、オリンピックなんていうことを絶対に避けるということ」と自説を語り、「一生懸命、自粛している所にお祭りという雰囲気が出た瞬間をテレビで見て人々がどう思うか」と、さらに踏み込んだ見解を示した。

これまで尾身会長は、コロナ対策や緊急事態宣言の発令、延長に際しての判断を仰がれ、記者会見では菅首相と並んで登壇し、専門的な説明はすべて委ねられるなど、重用されてきた。しかし、緊急提言を決断した尾身会長に対しては政府内から早くも反発の声が上がり、田村憲久厚労相は「自主的な研究の成果の発表ということだと思う。そういう形で受け止めさせていただく」と、公式提言として認めない構えでけん制した。

尾身会長は緊急提言の内容について明らかにしていない。開催以外の選択肢を提示しない政府にとっては提言によって五輪開催の是非や可否につながる世論拡大は避けたいところだ。尾身会長の提言に、注目が集まっている。【大上悟】