JR熱海駅前の仲見世通り商店街の老舗温泉まんじゅう「丹那屋(たんなや)」が12月1日から店頭販売を始めたまんじゅうの天ぷらが和風スイーツとして人気商品になっている。

今年8月24日、自動車に激突され店が大破した。新型コロナウイルスがまん延して緊急事態宣言という状況も重なり、4代目店主の磯聖幸(いそ・まさゆき)さん(51)は「この先、どうしたらいいのか、目の前がまっ暗になった」と当時を振り返った。

今年7月の伊豆山地区を襲った土石流事故の際には、地元消防団の団員だったことあって、被災した周辺の警備や交通整理に従事した。磯さんは「伊豆山のみなさんの苦労を思えばウチで起こったことは何でもない。いい機会と発想転換して店舗改築と新商品を開発することを考えるようにした」と話した。

「世紀の難工事」と称された丹那トンネルが開通した1934年(昭9)に開業したことで屋号に「丹那」をつけた。温泉まんじゅうを販売し、湯治(とうじ)や新婚旅行で熱海を訪れた観光客に大人気となった。土石流に直撃され、22日から5カ月半ぶりに営業再開したそば「木むら」は翌35年に開業している。

平成の終盤から熱海ではプリン、シュークリーム、各種フルーツを使った菓子などの人気が注目され、甘党の間では「スイーツの熱海」として脚光を浴びるようになってきた。今まで目玉商品の温泉まんじゅうを加工せず、受け継いできた味を守ってきたが「妻の実家が福島の喜多方で、残った食材は何でも天ぷらにしてしまう風習があって、余ったまんじゅうも揚げてしまう。そこに目をつけて、衣をつけて揚げて黒蜜をかけたらおいしかった。ジャパニーズスイーツとして負けられないと思った」と磯さんは店の再開をまんじゅうの天ぷらで勝負することを決意したという。

思い切って店舗改装をして、店の倉庫を片付けていたら50年前に店舗改装したときにしまっていた大きな看板を見つけた。倉庫で眠っていた看板をきれいに洗って、改装した店舗の奥に守り神のように飾った。丹那屋の創業記念日でもある12月1日にリニューアルオープンし、初めてまんじゅうの天ぷらを販売した。

食べ歩きスイーツとしてまんじゅう天ぷらがSNSなどを中心に話題となって、まんじゅう天ぷらを買い求める長い行列ができるようにもなった。「いろんな迷いもありましたが、天ぷらを商品化したことで、今までウチの店に来たことのないような若い世代も寄ってくれる。おかげさまで売れ行き好調です」と磯さんは話し「よく来てくれる常連には、今、ウチの天ぷらを食べると何かに当たるかもしれないから、宝くじでも買ってください、と冗談で話せるようになった」と笑顔をみせた。【寺沢卓】