ウクライナで捕虜となった複数のロシア兵が、ロシア軍の指揮官が負傷した自軍兵士を救助せず殺害していると証言していることが明らかになった。英デイリー・メール紙が、ウクライナ人ジャーナリストによって撮影されたというロシア兵へのインタビュー動画を公開し、その中で戦場で負傷して動けなくなった兵士が治療を受けることなく殺害される現場を目撃したと主張する証言を伝えている。

ある兵士は「地面に横たわる負傷兵に指揮官が歩けるかどうか尋ね、歩くのが難しいと答えると銃で撃って殺した」と語り、別の兵士も「重要なことは、そうしたことが1度ではないということだ」と語っている。犠牲になっているのはすべて若い兵士だといい、中には救助されれば助かる可能性があった兵士もいたと主張している。一方で、これらの兵士たちがどこで捕まったのかや所属していた部隊、どの地域で起きた出来事なのかなどは40秒の短い動画の中では明らかにされていない。

この動画はロシア側が、ウクライナ領土で亡くなった兵士や負傷兵の行方に関する情報がなく、遺体を回収できないと非難していることへの反論として撮影されたものだという。ウクライナは侵攻が始まって以降、これまで何度か国際赤十字を通じてロシア側に自軍の兵士の遺体を回収するよう呼びかけている。一方で、ロシア側は戦死者数を隠蔽(いんぺい)するため遺体から身分証明書を回収して集団墓地に埋葬したり、焼却処分したりしていることを英BBCが伝えている。プーチン大統領は、多くの遺体がロシアに戻ることで侵攻の失敗が明るみとなり、世論が反戦ムードになることを恐れていると言われている。

ウクライナ軍は数週間前から、首都キーウ周辺で遺棄された多数のロシア兵の遺体を探し出しては、冷蔵貨車を用いた移動式遺体安置所に収容していることが報じられている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)