任期満了に伴う北九州市長選は5日、投開票され、自民党の麻生太郎副総裁に近い、新人で元厚労省官僚の武内和久氏(51=無所属)が、自民党や立憲民主党など与野党が相乗りで推薦した元国交省官僚の津森洋介氏(47=自民、立民、公明、国民民主推薦)ら新人3人を破り、初当選した。

同市長選をめぐっては、自民党が分裂。2019年の福岡県知事選に麻生氏の支援で出馬(落選)し、今回は一部の自民党市議らの支援を受けた武内氏と、党が推薦した津森氏が大激戦を繰り広げた。津森氏は、麻生氏と関係が悪い武田良太元総務相が党の推薦候補として推しており、「麻生VS武田」の自民大物が絡んだ保守分裂選挙として、結果が注目されていた。

津森氏は、今期限りで退任する現職、北橋健治市長の事実上の「後継」の位置づけだった。一方、自民党本部が津森氏の推薦を決める際の決裁文書には、麻生氏が幹部として1人だけ署名をしなかったことが表面化。麻生氏は武内氏が落選した福岡県知事選を前面に立って応援したが、武田氏が支援した当時の現職に大敗した因縁の経緯がある。

今回の市長選前には、武田氏が計画した菅義偉前首相を招いた津森氏の応援演説計画に、麻生氏に近い議員も多い自民福岡県連側が難色を示し、最終的に中止となった。

麻生氏は今回、表だった動きはみせなかったが、麻生氏と武田氏の冷えた関係が市長選の構図に影を落とした中の選挙戦。自民系候補が勝利したものの、分裂選挙で自民党の推薦候補が落選したことで、党内に後味の悪さを残す結果となった。

津森氏のほか、共産党県常任委員の永田浩一氏(57=共産推薦)、広告デザイン会社社長の清水宏晃氏(39)も及ばなかった。

投票率は38・50%で、前回市長選を5・02ポイント上回った。