藤井聡太王将(21)が今年のタイトル戦初戦を白星で飾った。8日、栃木県大田原市「ホテル花月」で行われた将棋の第73期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局で、挑戦者の菅井竜也八段(31)を下した。

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藤井王将の相穴熊対策に「一日の長」があった感じです。考えた作戦だったんでしょうね。金銀4枚でガッチリと玉を囲い、途中まで金2枚、銀1枚の菅井穴熊に比べ、堅さの違いに物を言わせました。穴熊は、守備陣が1枚違うだけで堅さが大きく違うものです。

「玉を固めて先陣争いを制する」という構想通り、局面が進行して先に仕掛けました。2日目の封じ手開封以降、角を前線に出して動かしたり、歩が伸びて駒が前進しています。その後も5筋の歩、4筋の歩や桂といった小駒を使って拠点を作りました。まさに「穴熊崩しのお手本」と言うべき軽妙手を見せ、菅井陣を崩しました。最後の局面は「攻防ともに見込みなし」で、菅井八段の投了もやむなしでした。

持久戦模様の対局でしたが、「時間がかかっても行ける」と踏んで、強手の連続で攻め続けた藤井王将の大局観が光ってました。年明け初戦でしたが、かなり好調とみていいでしょう。

菅井八段は予定の作戦だったと思います。何とか手を尽くしましたが、攻めが続きませんでしたね。2局目以降の巻き返しに期待しましょう。(加藤一二三・九段)