全8冠堅持で23年度の全対局を終えた。藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖=21)が初防衛を果たし、自身が持つタイトル戦の連続獲得記録を「21」に伸ばした。

将棋の第49期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第4局が17日、栃木県日光市の「日光きぬ川スパホテル三日月」で午前9時から指され、後手の藤井が混戦から抜け出し午後7時7分、114手で勝利。3勝0敗1持将棋(じしょうぎ、引き分け)で同学年の伊藤匠七段(21)の挑戦を退けた。NHK杯決勝で敗れ、歴代最高勝率の更新こそ逃したが、歴代2位の勝率8割5分2厘(46勝8敗)で2年連続の勝率1位を決めた。

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藤井棋王が年度最後の対局で完勝譜を披露してくれました。序盤、2筋の歩と銀交換から伊藤七段が動いてきました。普通は「立ち遅れていないか」と警戒するものですが、「相手に先に動かれても主導権を奪われるわけではなく、作戦負けにはならない」と判断して戦っていたと思います。

2筋に銀、1筋に角と配置した局面では「もったいない使い方をするなぁ」と見ていましたが、その角を3筋~8筋への展開させた大局観は、まさに藤井流です。優勢を築いてからは3筋に飛車を打ち込んで金銀両取りをかけたり、伊藤七段の1筋への桂成を玉で取って「受けつぶし」にしたり、藤井ワールドの面白い将棋が展開されました。相変わらずさえていますし、好調ですし、4月からの名人戦も楽しみです。

伊藤七段には今局、致命傷になるような悪手はありませんでした。問題点を追究するより、素直に勝者を褒めるべきでしょう。19日に伊藤七段は、永瀬九段との叡王戦挑戦者決定戦があるそうですね。何度でもはい上がってください。そうやって、みんな強くなっていくのですから。(加藤一二三・九段)