28日に投開票された衆院3補選のうち、衆院東京15区補選は、立憲民主党の元江東区議、酒井菜摘氏(37)の当選が確実になった。東京都の小池百合子知事が前面に立って応援した作家の乙武洋匡氏(48=無所属)は、2022年参院選に続いて今回も議席に届かなかった。

小池氏の「肝いり」候補は、4月21日投開票の東京・目黒区長選に続いて2連敗。今夏の都知事選を前に、小池氏の「選挙に強い神話」にほころびが入りかねない結果となった。

今回の選挙戦では、特定の陣営から妨害行為を受け続けた乙武氏を支援するため、小池氏は選挙戦12日間のうち9日、公務の合間をぬって乙武氏の応援に入った。自身の選挙ではない候補者の応援では、異例の回数。乙武氏に自身が出馬を打診した「製造者責任」(小池氏周辺)があるとの思いからで、妨害対策で街頭演説の回数が限られる分、ガラス張りの選挙カーに乗って自らマイクを握り、路地まで回りながら支持を訴えた。ポスターのデザインやスタッフのコスチュームも提案するなど、乙武氏の当選へなりふり構わないスタイルを取った。

当初は自民、公明両党の推薦を見越し、自身が特別顧問を務める都民ファーストの会、関係が近い国民民主党との4党で臨んで勝利した昨年の江東区長選の「勝ちパターン」を想定。しかし、乙武氏の過去の女性問題に公明党が慎重で、乙武氏が自民党に推薦を求めないとしたことで自民党も推薦を見送り、「勝ちパターン」が崩壊。乙武氏は当初から劣勢が伝えられていた。小池氏自身にも、学歴詐称疑惑が再燃した。

小池氏は今年1月の八王子市長選でも、最終盤になって自民党候補の応援に入り勝利に導くなど、土壇場での強さも持ち味。最初の都知事選出馬をめぐりかつて緊張関係にあった自民党とも現在は関係良好で、7月の都知事選3選出馬した場合も、自民・公明との連携をベースにした「勝ちパターン」が念頭にあるとみられている。

ただ今月21日の目黒区長選でも、自民は小池氏系候補以外の候補者を擁立し、結果的にともに敗れ、現職の6選となった。目黒区長選、今回の東京15区補選と意中の候補を当選させられず、国政関与への足掛かりも得られず、小池氏自身の今後の選挙戦略にも影響を与えることになりそうだ。