2番人気ドウデュース(牡5、友道)が後方から豪快に差し切った。4年連続のG1・4勝目。鞍上・武豊騎手(55)は同レース7勝目となった。鞍上、馬、そして松島正昭オーナーの「とっておき話」を太田尚樹記者が披露する。
◇ ◇ ◇
21年8月25日。栗東トレセンで調教を終えた武豊騎手は携帯電話を手にした。
その着信を松島正昭オーナーは今でも覚えている。
「水曜日なのに珍しく武ちゃんから電話があって…」
20年来の友人でもある名手が、声を弾ませていた。
「走ります」
そう、デビュー前のドウデュースに初めてまたがった日だった。Cウッド6ハロン80秒9-12秒0。決してずばぬけたタイムではない。それでも、幾多の名馬を駆ったレジェンドには確信があった。
勧められて馬主となってから、常に心配してくれた。何度も耳にしたのが「松島さん、大丈夫ですか?」という言葉。「武豊騎手と凱旋門賞を勝つ」と公言して億単位の投資を重ねたが、当初はなかなか活躍馬が出てこない。「いつやめようか…」と悩む時に現れたのが、第89代ダービー馬だった。
「彼の方がホッとしたと思います。本当に救世主ですよ、僕にとっても、武ちゃんにとっても。漫画みたいでしょ? やっぱりロマンや思いというのが、今の世の中でも通用するんやなと。『ほんまにありがとう』『いやいや、こちらこそ』みたいな感じです」
殊勲のドウデュースには、年内にも引退後にも大仕事が残されている。そして、2人にも見果てぬ夢がある。今月6日の凱旋門賞で所有馬アルリファーが11着に大敗した直後。オーナーは肩を落とす盟友へ声をかけた。「また来年、頑張ろう」-。【中央競馬担当・太田尚樹】

