「せん馬の時代」が日本にも? 世界ではカランダガン、ロマンチックウォリアー、カーインライジングなどせん馬が席巻している。JRAでも最近10年間で出走頭数が1・5倍近くに増えるなど台頭の兆しが見える。今回の「ケイバラプソディー」では太田尚樹記者が、その背景を探った。
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日本でせん馬が増えている。25年のJRA出走頭数は586頭。15年の397頭から10年間で47・6%増と1・5倍近くになった。ちなみに30年前の95年は164頭。3倍以上だ。
やはり医学の進歩のおかげなのか?
JRAに聞くと「獣医学的な手術や麻酔の安全性の向上は一因ではあるものの、主要な要因ではない」との見解が示された上で、全身麻酔に用いる薬品の変更についての説明を受けた。
「JRAにおいては、以前はGGE(グアイフェネシン)という筋弛緩(きんしかん)薬を用いた麻酔導入・維持を行っていましたが、術後の覚醒が不安定で人馬に危険が伴う可能性がありました。現在はGGEではなくプロポフォール等を用いることで覚醒の質が格段に向上しています」
では、その「要因」とは何なのか?
トレセンで取材してみて考えられるのが、去勢へのハードルの低下だ。特に調教師の口から「馬主さんに言いやすくなった」といった声をよく聞いた。
海外と違い、かねて抵抗感は強かった。あるトレーナーは「日本は特にマイナスイメージがあるのでは。人間のタトゥーやピアスみたいな感じで」と指摘。これは興味深い。文化の違いもあるのかもしれない。もちろんクラシックや種牡馬への道も絶たれる。JRAだと2~3歳限定の全G1に出られないのが現状だ。重賞ウイナーのデビットバローズを手がける上村師も「最終手段。できればあまりしたくない」と明かす。
一方でメリットは大きい。栗東で最多タイの7頭を擁する友道師は「無駄なことにエネルギーを使わなくなるし、やっぱり扱いやすくなるよね。乗馬だってせん馬ばかりだから。扱う人間も安全になる。馬にとっても人にとってもプラスは多いと思うよ」と実感を口にする。美浦での最多は13頭の堀厩舎。東西の名門においても前向きだ。
世界での活躍も背中を押す。カランダガン、ロマンチックウォリアー、カーインライジング。凱旋門賞でも来年から出走が可能になる予定だ。今週の関屋記念にG2勝ち馬マテンロウスカイを出走させる松永幹師は「比較的結果も出ていているし、これからも増えてくるのでは」と見込む。JRA平地G1を制したのは外国馬を除くと5頭だけだが、数が増えればチャンスも広がる。レガシーワールドやマーベラスクラウンの再来が現れる日も近いかもしれない。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)






