「セン馬の時代」が日本にも? 世界ではカランダガン、ロマンチックウォリアー、カーインライジングなどセン馬が席巻している。JRAでも最近10年間で出走頭数が1・5倍近くに増えるなど台頭の兆しが見える。今回の「ケイバラプソディー」では太田尚樹記者が、その背景を探った。

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JRAに取材すると、セン馬の増加要因については「獣医学的な手術や麻酔の安全性の向上は一因ではあるものの、主要な要因ではない」との見解が示された上で、以下の回答があった。

-この数十年または最近10年のスパンにおける「手術や麻酔の安全性の向上」について具体的に教えてください

「手術の術式について、基本的な手技には大きな変化はありません。各施設ごとに全身麻酔が可能な施設(JRA等)であれば『半閉鎖法』、牧場などで立位鎮静下で実施する場合は『開放法』が選択されています。麻酔については全身麻酔に用いる麻酔薬の変更が安全性の向上に寄与していると考えています。JRAにおいては、以前はGGE(グアイフェネシン)という筋弛緩(きんしかん)薬を用いた麻酔導入・維持を行っていましたが、術後の覚醒が不安定で人馬に危険が伴う可能性がありました。現在はGGEではなくプロポフォール等を用いることで覚醒の質が格段に向上しています」

25年鳴尾記念を制したセン馬のデビットバローズ
25年鳴尾記念を制したセン馬のデビットバローズ

-去勢のメリットやリスクについて、あらためて解説をお願いします

「メリットは雄性ホルモン(テストステロン)の消失による気性の安定と調教や日常管理の安全性の向上が挙げられます。また、集中力が向上しパフォーマンスが改善するケースもあるようです。デメリットとしては、まず種牡馬としての価値が失われることです。手術のリスクもデメリットの1つとなります」

(飼養環境上、馬では術創を完全に清潔な状態で維持することは不可能です。そのため、術創感染や精索炎、重症な場合だと腹膜炎まで波及してしまうリスクがあります。稀なケースでは精巣を切り取った鼠径輪(そけいりん)という穴から腸が飛び出るヘルニアを発症することもあります。全身麻酔を実施する場合は去勢に限らず倒馬や起立のリスクもあります)

「また、去勢したことにより闘争心が減退して走る気がなくなり、以前よりもパフォーマンスが落ちてしまうケースもあるようです」

ロマンチックウォリアー(C)The Hong Kong Jockey Club
ロマンチックウォリアー(C)The Hong Kong Jockey Club

-去勢後の出走において体重を減らす馬をよく見かけますが、どのような要因が考えられますか

「去勢手術直後のストレスや運動制限により、一時的に馬体重が減少するケースがあります。また生理的な要因として、去勢によってタンパク同化作用(筋肉を作る働き)も持つ雄性ホルモン(テストステロン)がほぼ消失するため、筋肉量が落ちて体重が減少するケースもあるかもしれません。一方で長期的には、一般的に気性が穏やかになり、代謝が落ちる傾向にあるため、逆に体重が増加する馬もいると考えます」

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)