東京湾本牧以北のマダコが1日に解禁した。その直後は3~4キロも型をみせ、今年も好調かと思われたが、日がたつにつれ「今年は乗りが悪い」という声が聞こえてきた。そこで実態を確認すべく19日、神奈川・川崎「つり幸」(幸田一夫船主=73)でマダコ釣りを楽しむ釣り人を取材した。船宿に着くと、マダコ船を担当する新海雅也船長(40)の「厳しいですよ」というひと言が待っていた。毎日現場に出て、肌で感じている船長の言葉だけに重みがある。

この日、マダコ船に乗船した釣り人は14人。釣り方はテンヤも可だが、全員が餌木での挑戦となった。開始約10分、船中第1号は左舷トモ2番目、佐藤佑さん(43)の400グラム。「底をたたいていたら引いた感じがありました。根掛かりも気になったので、一気に合わせたら乗りました」。マダコ釣りは昨年デビューで、今年は今回が初挑戦。「去年も乗ったけど小さかったので、今日のが自己ベストです」とVサイン。餌木には何やら茶色い物体が巻き付いていた。「ドギーマンです。ドッグフードの。においが有効と聞いて試してみました」。におい誘惑作戦が功を奏した。

だが後が続かない。右舷トモ2番目の小黒成樹さん(55)が800グラムを上げたのは約1時間後だった。「トントンしていたら、もさ~とした感覚があったので合わせました」。小黒さんの餌木には豚ばら肉が巻いてあった。

その約1時間後、右舷ミヨシの関根さんに400グラムがヒット。3年前の新型コロナを機に釣りを始めた。「2週間くらい前に来たときに1・8キロを釣ったけど、去年ほど数が乗らないような気がします」。関根さんの餌木にはトリ皮が巻かれていた。「昨日夕飯が鶏肉だったので、皮は食べずに利用しました。たくあんでも釣れると聞きましたよ」と笑った。

その直後、左舷ミヨシ3番目の田中聡さん(48)に600グラムがヒット。「今年初めてのマダコ。今年は型が小さいと聞いていましたが、取りあえず1匹取れて良かったです」。

まさにポツポツ状態だった中で、1・5キロを頭に5匹を掛け、サオ頭を獲得したのが左舷トモ3番目の山口真澄さんだ。釣具店「キャスティング東久留米店」に勤務だが、「マダコ釣りは3年前に始めました。それまで1キロの壁が越えられなかったのですが、今年の解禁日に仕立てで出て3・3キロを釣りました。でも2匹しか釣れなかったので、今日は練習で来ました」。山口さんの餌木はシンプルに白と赤で、巻物はなし。「いろいろ試した結果、シンプルな餌木にたどり着きました」。1・5キロは「いきなりズンと来た感じだったので、根掛かりではないと思いました」。

もう1人、5匹でサオ頭となったのが小黒さんだ。父六男さん(83)との釣行で、六男さんは1・4キロをゲット。「今日はボウズかと思っていたので満足です」とほほ笑んだ。手応えは「根掛かりが心配だったので、少し浮かせ気味にコツコツしていたら、スーッと重くなった」。なお、六男さんの餌木にも豚ばら肉が巻き付けられていた。

文字通り「ポツポツ」で、釣果は0・4~1・5キロ、0~5匹でサオ頭2人、ゼロ3人だった。新海船長は「今季で一番ダメな日」とし、「昨年までが釣れ過ぎだったんです。本来のマダコ釣りは0~3匹とか、もっと厳しかったと思います。それでもいい日はつ抜けもあるので、本来よりはいいと思います。あまり欲張らず、まずは1匹を狙って欲しいです」と話した。

「今年は乗りが悪い」の正体は、「昨年と比べて」が省略されたものだ。ある意味、毎日のようにトップがつ抜けで釣れた昨年が異常なのだ。つまり、「あるべき姿に戻った」のかもしれない。そうだとすると、「なぜ昨年が良かったのか?」という疑問が浮かび上がる。つり幸関係者は「多分天敵がいなくて、卵が食べられなかったんじゃないかな」とつぶやいた。

7月1日には、富岡沖も解禁となる。