初出場の高校3年生、鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が衝撃の五輪デビューを飾った。今季世界最高の208・94点をマーク。3本目の4回転ジャンプとなるループを初成功するなど、自己ベストを11・45点も更新して男子1位に輝いた。チームに最大の10ポイントをもたらし、暫定3位で日本初の団体メダル獲得に王手をかけた。五輪2大会経験の父正和コーチ(50)と親子2代出場の夢もかなえた。最終日7日はペア、アイスダンスと女子のフリーが行われる。
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鍵山が頂をうかがう領域に足を踏み入れた。世界で羽生と米国のチェンしか知らないフリー200点台。今季世界最高、歴代3位のハイスコアを初の五輪でたたき出し「全く緊張しなかったんです」。本人もよく分からないが「謎の自信があった」。全7回のジャンプをノーミスで決めると、演技中に思わず笑う。「チームの目の前で『よっしゃー』と」。仲間の待つ席へ氷の上を滑らず、走った。
進化の証明が4回転ループだった。昨年10月の五輪テスト大会(北京)など、転倒してきた新技に公式戦3度目の挑戦で初成功。16年に羽生が世界で初めて跳んだ、使い手が少ないジャンプを習得した。世界一を争うために不可欠な4回転を3種4本へ。ループが跳べれば「ほかの要素には不安はない」と自信があふれる。男子フリー1位。日本初の団体メダルへ肉薄し「(樋口)新葉ちゃんのSPを確認し、勇気というか頑張らないと、という気持ちが芽生えた」と力が出た。
五輪に出る。この日、夢をかなえた。92年アルベールビル、94年リレハンメル大会に出た正和コーチと父子2代オリンピアンに。「練習では日本人で初めて」4回転を跳んだ父から、5歳から指導を受けてきた。
今やサルコー、トーループは「2年後に5回転を跳べる」(正和氏)という次元。その次に鍛練を重ねてきたのが、4回転ループだった。今季世界で1人だけ2連勝したGPシリーズでも全日本選手権でも「精度が低い」と父から強制封印させられたが、五輪では「僕が入れたかった」と優真が譲らない。「ガツンとできた」と親を納得させた。
2世とはいえ、幼少時は全国で2桁順位など伸び悩んだ。18年6月、中学3年の時に父が脳出血で倒れ、1人で考え練習するようになってから急成長。体調が戻り、初めて2人で海外遠征できた昨春の世界選手権では銀メダルに輝いた。17歳の快挙も「ここがスタート地点だよ」と父から言われた優真はうなずいた。夢の続きは五輪につながる。リンクサイドで見守った父に、珍しくガッツポーズさせた。まだ底は知れない。
自身初の200点超えで日本に貢献し「今までは緊張して自分をだますために『楽しまなきゃ』と思っていたけど、今日は心の底から楽しく過ごせた」。最高峰の舞台で、この平常心。五輪は1日で選手の人生を変える。8日から始まる個人戦の金メダルも狙える存在に昇格した。【木下淳】
◆鍵山優真(かぎやま・ゆうま)2003年(平15)5月5日、横浜市生まれ。5歳で競技を始め、19年に全日本ジュニアを制し、続く全日本選手権で宇野と羽生に次ぐ3位。昨季シニアに転向。昨年3月の世界選手権2位。今季はGPイタリア杯、フランス杯優勝。全日本選手権は3年連続3位。父正和さんは91~93年に全日本選手権3連覇。160センチ、51キロ。血液型O。




