<リオ五輪:陸上>◇13日◇男子100メートル予選

 ケンブリッジは、次のラウンドで記録も順位も期待できる。国内の走りを再現しているし、経験がないことがプラスに働いている。

 100メートルは先頭を走ってなんぼ。人の背中を見るスポーツじゃない。1度失敗したり、自分より明らかに強い相手とレースをすると、その後にぱっと先にいかれた時に「あ、出られた。怖い」という記憶が、頭にインプットされることがある。ケンブリッジは、知らなくていい情報が、脳や体にないことが一番の強みだ。

 山県はしっかり走れていたが、1着で通過してほしかった。内容的には山県の方がいいが、経験が「ある」「なし」で考えると、ない強みがあるケンブリッジが面白い。

 桐生は、立ち上がった時に膝が上がり過ぎて、上半身と下半身の動きがずれていた。本人にそのつもりはないだろうが、経験によって持ち味が消されてしまった。成長の過程では高いステージで走りたいと必ず思うものだが、海外遠征は環境の変化、日本との時差もあって打ちのめされることが多い。国内で余裕を持って取り組める試合で自信をつけていけば、予選で終わるようなことはないだろう。(日刊スポーツ評論家)