川崎FのMF原川力(22)は、黄金クラスで切磋琢磨(せっさたくま)して育った。京都ユースに所属していた立命館宇治高3年時。同級生には、同じ京都ユースの久保裕也(現スイス1部ヤングボーイズ)をはじめ、高橋祐治(現J2京都)、三根和起(現新潟シンガポール)らがいた。

 後にトップ昇格することになる4人の担任だった谷口玲子さんは「原川はプロになることしか考えていなかった。他の3人といいライバル関係で、代表の遠征がある時が一番顕著に(関係性が)表れていた」。世代別代表クラスだった4人は、自分が代表に呼ばれないことがあると、代表に行ってしまった同級生の空席を見つめることとなる。教室に入る度に現実が襲ってくる。そういう時、原川は悔しい思いを押し殺しながら授業を聞き「早くホームルーム終わって! 練習に行きたい!」と話していたという。

 だからこそどんな時でも努力を惜しまなかった。卒業式のスピーチ。原川は「スペイン語でやる」と宣言した。勉強は得意ではなかったが、携帯電話の録音機能にスピーチの文言を吹き込み、空き時間ずっと練習した。トイレでも練習に没頭し、携帯を落として水没させてしまったぐらいだ。サッカーでも同じ。毎週のように地元の山口から車で片道約5時間かけて試合に来てくれる両親に情けない姿は見せられなかった。

 最終予選ではリオ行きが懸かった一戦で決勝点。真面目な性格は大舞台で裏切らなかった。持ってる原川が、今度はメダルをもたらすひと振りを放つ。【小杉舞】

 ◆原川力(はらかわ・りき)1993年(平5)8月18日、山口市生まれ。レオーネ山口でサッカーを始め、京都ジュニアユースを経て12年に京都ユースからトップ昇格。同年7月22日の愛媛戦でJデビューした。14年にはJ2愛媛に期限付き移籍し、15年に京都へ復帰。今季から川崎Fへ完全移籍した。J1通算4試合無得点。J2通算71試合1得点。175センチ、72キロ。