【リオデジャネイロ5日(日本時間6日)=三須一紀】南米初のリオデジャネイロ五輪が開幕した! 開会式が行われたマラカナンスタジアム周辺は半径約500メートルが完全封鎖されるなど、テロ警戒のため厳戒態勢が取られた。リオ市中心街のパブリックビューイング(PV)会場では、高価なチケットを買えない市民、約3万人が集結。ブラジル入場の瞬間、国民は絶叫し、踊り続けた。

 「こんな厳戒態勢は見たことがない」。リオ市に約50年住む男性は、サッカーの聖地「マラカナン」の普段と違う顔に驚いた。

 スタジアムから放射状に伸びる道路は半径約500メートルの場所で、ことごとく封鎖された。男性は「W杯の際は車の規制はあったが、人がスタジアムの近くに行けないなんて初めてだ」と語った。

 30代男性は「W杯の試合の時でも地下鉄の駅は入れた」と話すが、この日はスタジアムに隣接する駅にすら、チケットやパス所持者しか入れなかった。

 軍隊や警官隊が道という道にバリケードを張った。中には装甲車を準備するゲートもあった。軍隊の男性は「君たちが取材したい気持ちも分かる。だがテロが起きないように、どうしてもこうしなければならない」と説明した。

 それらの外側ではチケットを求めるオダク・マルクスさん(58=銀行員)がいた。サンパウロから五輪ボランティアでやってきたが「10万円ほどするチケットは余っていたがそんなのは買えない。せめて1万~2万円ぐらいなら…」と譲ってくれる人を探していた。

 場所を変え、セントロ(中心街)にあるPV会場に行くと、開会式に行けなかった人であふれかえっていた。リオから海を隔てて隣のニテロイで定期船の船乗りをしているパウロ・ジョージさん(28)は高価なチケットは買えず、PV会場に来た。「五輪はすばらしい。でもブラジルにはいろんなレベルの人がいる。できれば、スタジアムに行きたい。でも行けない。ここはタダだから来たんだ」と笑いながらビールを飲んだ。

 月給は約2300レアル(7万5000円)で妻と子ども2人を養うのは「厳しい」と話す。偶然、50レアル(約1600円)という格安でバレーボールのチケットが手に入ったため、その試合だけ1人で見に行くという。

 ブラジルの入場時は約3万人の大観衆が熱狂。シルビア・ファビーニャさん(40=通訳)は「この国は良いことも悪いこともあった。ブラジルで五輪はできないと言われた。でも現実に開かれている。夢のようだ」と目に涙をためながら、乱舞した。

リオ市中心街のパブリックビューイング広場で開催国の入場に熱狂するブラジル国民
リオ市中心街のパブリックビューイング広場で開催国の入場に熱狂するブラジル国民