【リオデジャネイロ11日(日本時間12日)=三須一紀】南米初開催のリオ五輪・パラリンピックには、7万人ものボランティアが参加して大会運営を支えているとされる。ただ、多くの外国人と関わる多くの人が英語を話せず、通じるのはポルトガル語だけで、会場の内外で混乱が生じている。五輪パークなどを歩き、実態を取材した。

 これほどまで「ポルトガル語ごり押し」で良いものだろうか。コパカバーナ地区に設置されたチケット売り場では、8カ所の窓口のうち、英語が話せるのが2カ所だけだ。列に並んでからチケットを購入するまで約2時間もかかった。

 バーハ地区の五輪パークにあるチケット売り場では、前に5人ほどしか並んでいなかったのに約45分も要した。3カ所の窓口のうち2カ所を閉鎖したまま30分以上が経過。後ろには長蛇の列ができていたが、窓口を開けようとせず、ブーイングが起きた。しまいには閉鎖中の窓口の中からガラスを見つめ、悠々と髪の毛をセットする女性ボランティアもいた。

 道案内のスタッフに話を聞いても「ノン、イングレース(英語)」と返されることが多い。飲食販売のブースは、ほぼポルトガル語対応しかできないスタッフだった。

 今回初めて通訳担当として参加した新条正恵さん(39=コンサル経営)は「ブラジル人ボランティアの9割ぐらいがポルトガル語しか話せないのでは」と話す。「海外組、現地組ボランティアの意思疎通ができない」と言い、英語が話せる人が少ない東京でも「20年に同じ事が起きると思う」と警鐘を鳴らした。

 彼らは明らかに日本人と分かっていても、ポルトガル語で話しかけて来る。「ノン、ポルトゲース(ポルトガル語は話せません)」と言うと、不得意な英語を必死に使って、教えてくれるスタッフもいた。ただ、これも全員ではない。

 スタッフが2人しかおらず、その1人が抜けたら「誰がこの長蛇の列をさばくんだ?」という状況でも、決められた休憩時間だったのか、問答無用で裏に消えた女性もいた。

 このようなマイペースでも五輪は順調に開催されている。ただ、五輪観戦を楽しみに現地を訪れる海外からの観光客には大きなストレスとなる。

 ◆ブラジルの外国語事情 外務省ホームページによると、義務教育は小学1~9年生、6~14歳を対象に行われ、5年生以上は英語かスペイン語が必修。スペイン語は公用語のポルトガル語と似ているため、理解する国民が多い。約2億人の人口で、英語を話せるのは5%程度とされる。