体操ニッポンに何が起きたのか-。3大会ぶりの団体総合金メダルを狙う日本男子チームが、予選4位で8日(日本時間9日早朝)の決勝に進出した。エース内村航平(27)が世界選手権優勝の鉄棒で落下するなど選手たちはミスを連発。予選の得点は決勝に持ち越されないとはいえ、勝利の青写真は崩れた。

 日本5種目目の鉄棒。この種目の世界王者で今大会でも金メダルの有力候補だった内村が、離れ技「屈伸コバチ」に失敗した。バーをつかめずに、背中から落下。その瞬間、団体総合の予選1位が絶望的になり、内村の鉄棒の種目別決勝進出も消えた。

 日本はスタート種目のあん馬からミスが目立った。得点も思うように伸びなかった。その要因は3つあった。

 (1)不慣れな器具 リオ入りしてから練習会場の本番用器具で練習していたが、3日の会場練習は戸惑っていた。この日もあん馬で田中が落馬し、跳馬でも山室が着地をミス。本番器具への適応ができなかった。

 (2)会場の雰囲気 地元ブラジルとの同組で、大声援にリズムを狂わされた。山室は「歓声が気になったのはある」と話した。異様なムードが日本の選手たちから冷静さを失わせた。

 (3)厳しい採点 全体的に技の正確さ、完成度について厳しかった。足が開く、膝が曲がるなどには容赦ない減点。他国も含め思うように得点が伸びなかった。

 内村はミスが相次いだ理由を「過信があったかも」と説明した。普通なら採点の厳しさは美しく正確な日本にとって有利。しかし、昨年の世界選手権団体優勝で「このくらいで大丈夫」というような演技が大減点を呼んだ。「普通にやれば1位通過」「団体金は自信ある」と話していた内村は「これが五輪」と言うのが精いっぱいだった。

 1位中国も得点は伸びなかった。4位とはいえ、十分に金メダルを狙える位置にはいる。内村も「みな経験があるし、修正すべき点は分かっているはず」と強気だった。白井も「今日学ぶことが多かったので、決勝は大丈夫」と話した。もちろん、誰ひとり諦めてはいない。

 だが、4位通過で金メダルが厳しくなったのは事実。水鳥監督は「最後プレッシャーのかかる鉄棒ではなく、我々が得意とする床運動になったのはプラスに考えないと」と前向きに話したが、疲れの残る最終種目が最も負担の大きい床運動になるのは不安が残る。審判に対する印象でも「予選4位チーム」は不利だ。

 これまで、04年アテネ五輪を含め団体総合の金メダルは、常に床運動で始まって鉄棒で終わるパターンで獲得してきた。内村は鉄棒の最終演技者として、アテネ大会の冨田洋之の「栄光の架け橋」超えに意欲を見せていたが、それもかなわなくなった。「気持ちを切り替えてやるしかない」。金への可能性を信じて、エースは悲壮な決意を口にした。【荻島弘一】