今日17日に開幕する女子ゴルフで韓国が表彰台独占を狙う。4人全員が世界ランク(WR)1ケタ。韓国国内でも「ドリームチーム」との呼び声が高い。体格的には日本人と変わらないのにWRトップ20に9人が名を連ねる強さの秘密は何か? 日本ツアーで圧倒的な強さを誇るイ・ボミのコーチのチョ・ボムス氏(63)に聞いた。

 躍進に伴い、韓国の育成システムは広く知られることとなった。「国家代表・代表常備軍制度」。代表、常備軍ともに男女6人ずつが選ばれる。全額協会負担で合宿や試合など年間200日近く活動する代表に対し、常備軍は学校が長期休暇に入った時のみだ。

 チョ氏は「代表はステータス。憧れであり、夢であり、プライド。代表の子どもは国旗入りのユニホームを学校にも着ていく。常備軍にもユニホームはあるが、どこか劣等感を覚えるのです」と言う。公式戦の成績で毎年メンバーの入れ替えがあり、強烈なエリート意識が激しい競争を生む。

 男女3人ずついた小学生の常備軍は2、3年前に廃止されたが、将来を見据えたサバイバルはこの年代から始まる。中学以降の代表入りに直結する韓国ゴルフ協会(KGA)主催の大会に出られるのは、地区や連盟の試合で上位に入った選手だけ。「幼い頃から年間15試合ほどを戦うことで、高校に上がる頃には肝っ玉が据わる。大会慣れした勝負強い選手が育つ」。常備軍だったイ・ボミは日本ツアーのプレーオフで通算7勝1敗。確かに勝負強い。

 最初に“正しいスイング”を徹底的にたたき込む指導も特徴だ。「1度悪い癖がつくと、直すために膨大な時間がかかる。最悪の場合、直らないかもしれない。米国では、どうやって飛ばすかをまず教えるが、スイング軌道さえしっかりすれば、正確なインパクトができるし、パワーも自然とついてくる」と解説する。

 韓国ツアーでは30歳を機に第一線を退く選手がほとんど。幼少期からのスパルタ教育の影響で「トレーニングやケアを徹底しなければ、肉体的にも精神的にも無理が来る」という。

 現在中核を担うのは、98年の朴セリのメジャー優勝に影響を受けたイ・ボミら88年生まれの「朴セリ・キッズ」たち。今季は、韓国ツアーで22歳の朴城■が5勝を挙げ、16歳のソン・ウンジョンが7月の全米女子ジュニアと8月の全米女子アマを制すなど新世代の台頭は近い。チョ氏は「韓国の強さは、これからも続いていくでしょう」と予言した。【盧載鎭、亀山泰宏】

※■は火ヘンに玄

 ◆チョ・ボムス 1953年6月11日、韓国・ソウル生まれ。アマチュア時代は韓国代表に名を連ね、86年にプロ転向。97年から指導者となり、米ツアー通算8勝の金美賢、同3勝の金寅敬らを育てた。イ・ボミは高校3年から指導。13年には米ゴルフダイジェスト誌の「アメリカを除いた世界の優秀コーチ50人」に選ばれた。