17年世界選手権女子52キロ級銀メダルで、昨年11月に48キロ級に階級変更した角田夏実(27=了徳寺大職)が、「阿部詩の強さ」を語った。

元ライバルは、この3年間での阿部の急成長を実感し、「無敵」になったと評した。対戦する度に強くなり、対策してもそれを上回る強さだという。“阿部キラー”と呼ばれた角田は、通算3勝1敗で勝ち越していたが、18年11月のGS大阪大会決勝で唯一の「1敗」を喫した。延長で3つ目の反則を誘発されて反則負け。「過去3戦とは違う緩急をつけた戦術で驚いた。野球で例えると、160キロの直球だけの剛腕投手が急に90キロのスローカーブも投げられるようになった感じ」。この負けが、柔道人生の転機にもなった。阿部の若い勢いと今後は「さらに伸びる」と考え、1年後の階級変更に踏み切った。

3点のストロングポイントをこう挙げた。(1)技の破壊力。兄の一二三と同じで両肩の可動域が広く、瞬発力があるため、どの位置からでも得意の袖釣り込み腰などを決めてくる(2)高い身体能力。体の軸のバランスが良く、受けも強くて投げられない。スタミナも武器で、延長に入っても崩れない(3)勝ち気な性格。「絶対に負けない」という強い気持ちを常に持ち続けている。他の代表選手も感心するほどのメンタルという。

今年1月の代表合宿で、今後の人生について雑談した時、「らしさ」を感じた。25歳前後で結婚願望がある阿部に対し「やりたいことをやって、結婚は30歳ぐらいで良いんじゃない」と角田が助言すると、「遅すぎます。おばさんじゃないですか!!」と言われたという。「おばさん」扱いされた27歳は「びっくりしたけどこれが阿部詩。柔道と同じで本当に真っすぐな性格」と、先輩にも物おじしない発言に脱帽した。

5カ月後の初の夢舞台では、女子52キロ級で日本初となる金メダルに期待が懸かる。「私とは逆で、重圧や声援を力に変えるタイプだからやってくれるはず」。代表争いで切磋琢磨(せっさたくま)した元ライバルは、こう太鼓判を押した。【峯岸佑樹】