安倍晋三前首相(66)が日刊スポーツの単独インタビューに応じた。最終回の3回目は、あふれる「アーチェリー愛」を語り尽くす。1日に約8年ぶりに全日本アーチェリー連盟会長に復帰した。成蹊大時代に体育会アーチェリークラブに4年間所属しており、実体験を交えて競技を語ることのできる存在。会長復帰にあたり、OBや現役生からは期待の声も寄せられている。【聞き手=平山連、三須一紀、近藤由美子】

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安倍前首相がオリンピック(五輪)招致から延期決定まで、要所で絶妙なタクトを振っていたことがこのインタビューで感じられた。延期を1年と決断した背景を聞くと「2年で果たして国際オリンピック委員会(IOC)が受け入れるか」と説明。首相在職7年8カ月という百戦錬磨の交渉術から中止を回避できる絶妙なラインを読み、IOCがのめる条件を提示した。

組織委の森喜朗会長と綿密な相談の上、ギリシャでの聖火リレーが始まった最中に、水面下で米トランプ大統領に延期の了承を取り付けた。その後G7など国際社会にも理解を求めた。聖火をギリシャに置かず、日本に持ち帰ることが中止回避にとって重要だったと複数の関係者は明かす。3月12日にオリンピアで行われた採火式から、同19日に日本に到着するまで、着々とこなしていったこれら手順に、安倍氏のしたたかさを感じた。

選手より難しい観客の入国問題について「来夏の大会、今から決め打ちすべきではない。今年の暮れから来年初めには、ワクチンが出て来ると思う」と話し、五輪をインバウンド復活のきっかけにしたい思惑も感じられた。【三須一紀】