五輪延期でセーリング界に高波…11億円水の泡!?

11億円が水の泡!? 東京五輪が1年程度延期された余波で、セーリング界に高波が押し寄せている。五輪会場の江の島ヨットハーバーを使用していた個人の約700艇は、五輪用に約11億円をかけて移動していた直後の延期決定だった。レース海面でシラスを取る漁業権の問題も再燃しかねず、開催季節が変われば、レースにとって風や波も変わる。関係者は頭を抱えている。

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日本のセーリング界に、いきなり嵐が渦巻いた。艇の移動を担当する神奈川県セーリング課の担当者は「どうすればいいのか。白紙状態だ。頭が痛い」。江の島がある湘南港の利用者に、16年から5回も説明会を開き解決してきた移動問題が宙に浮いた。

近くは神奈川・葉山、逗子、遠くは千葉の稲毛まで、艇の移動先だけで10カ所以上になる。19年8月に抽選で移動先を割り振り、今年1月から移動を始めた。すでに620艇ほどが移動を終えた。かかる費用は、運搬費、艇置料、補償金など約11億円。すでに組織委員会から東京都を経て支払われている。

1年程度の五輪延期で、艇を移動先に置いたままだと、所有者は江の島で艇に乗れない。経費もかかる。1度、江の島に戻せば、また21年の五輪前に移動を余儀なくされ、経費は簡単に考えれば倍増だ。進んでも戻っても、大きな課題が待ち受ける。

また、江の島はシラス漁業が盛んだ。江の島近辺の漁場は、いくつかの漁業組合、漁業形態、法律などが複雑に絡み合う。五輪期間中に営業を停止する交渉も、補償など課題を多く抱えていた。18年W杯江の島大会でも、レースの開始時間で漁業関係者から抗議を受けた。その交渉ごとも振り出しに戻る。

競技でも、メダル作戦で全面見直しが必要になるかもしれない。セーリングは、風、波など、自然が相手。開催時期が変われば、自然の傾向も変わる。日本セーリング連盟の中村健次ヘッドコーチは「江の島は夏は海風、冬は陸風が強くなる」と話す。21年が4月の“桜”五輪となれば、風向も波も、想定していた夏とも違う。

フィン級を除く代表選手に内定している9種目14人は再選考を行わないと、25日に連盟のオリンピック強化委員会が発表した。多くの高波を乗り越え、ようやくたどり着いたはずの20年東京五輪。その先には、さらなる高波が待ち受けている。