ルール改正後、初の33バンクで行われたG3小田原は、全体的にレース展開が速く、競輪界のスピード化を印象付けました。
今、ベテラン追い込み型の多くはスピード化への対応に四苦八苦しています。望月永悟(42=静岡)もそんな1人。近年はスピードを意識するあまりに、体に力みが出てしまうのが悩みの種。そんな望月が体の使い方にヒントを求め、格闘技ジムの門をたたきました。
小田原駅のすぐ近くにあるROOTS(ルーツ)ジム。主宰者は「修斗のカリスマ」と呼ばれる人気格闘家の佐藤ルミナさん(45)。94年のデビューから連戦連勝で絶大なインパクトを与えた総合格闘技ブームの先駆者です。14年に現役を引退。今は出身地の小田原で後進の指導にあたるかたわら、格闘技番組の解説者なども務めています。
163センチの小兵ガッツマーカーの望月は、小柄なルミナさんが柔軟性や俊敏性を生かして大きな外国人選手と闘う姿に感銘を受け、20年来の大ファン。念願の対面が実現しました。
ジャンルは違えど、命懸けで戦ってきた者同士。実直に悩みを打ち明ける望月にはルミナさんもシンパシーを感じた様子で、指導は徐々に熱を帯びていきます。
話題は体の使い方に始まり、体幹を意識したトレーニング方法、恐怖心を克服するマインドの保ち方、趣味にまで及びました。
「フィジカルで太刀打ち出来ない相手にも技術でごまかせる」、「発想1つで卓球を格闘技や競輪のトレーニングにすることも可能」といったルミナさんの持論を真剣に聞き入っていました。
「今はすべての種目において競技年齢が上がっていて、アラフォーでも活躍できる時代。それにしても宇野薫や、桜井マッハ速人と同世代の望月君が第一線で戦っているのはスゴい」と憧れの人に褒められた望月は感無量。
「頭も体も柔軟に。今後は視野を広げて、少しでも長く現役を続けられるように精進したい。本当にいい時間でした」と、すがすがしい表情で帰路につきました。
新世代のスターの華々しい活躍が注目されがちですが、不安を抱えつつも日々の探求を惜しまないベテランの奮闘ぶりは応援したくなりますね。【松井律】