山田英明を取材していると、渡辺晴智とばったり会った。「久しぶりじゃーん」と同級生のように話してきたが、私の方が年上である。息子の渡辺雅也が本格化してきたので「最近いいやん」と話を振ると、珍しく「いい!」と目を細めた。静岡G3の準決で、郡司浩平の後ろを回って連結を外しながら、まくりで1着に来たレースは涙が出そうになったと言う。普段は厳しい言葉が多いだけに「鬼の目にも涙」という言葉が頭をよぎった。

ヤマコウは追い込みとしての地位確立に懸命な山田英明にエールを送った
ヤマコウは追い込みとしての地位確立に懸命な山田英明にエールを送った

そして山田である。近況は追い込み選手として完成に近づいているように見えるが、本人の評価は厳しい。「全てが中途半端」と言い切り「不器用なんで、追い込みマークの軸を探りながら走っている」と、いまだ手探りの状態だという。自力で上位を走ってきた選手が、追い込みへ転じる難しさは想像以上だろう。「自分は競輪のライン戦が好きなので、後輩が出てくると自力を封印して後ろに付くけど、それが正しいかどうかは分からない」と葛藤も口にした。

ただ、追い込みは何より位置が重要だ。その意味で、防府ウィナーズカップの準決の仮番組発表後、どちらが山崎賢人の番手を回るか荒井崇博との攻防は象徴的だった。あの主張こそが、山田の中にある「追い込み選手としての軸」を示していたように感じる。

準決11Rは初日特選に続いて北津留翼と連係する。レース運びは北津留が上位なので、確実に追走して決勝を進出を狙う。(日刊スポーツ評論家)