フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

リバプール、マンチェスターCの優勝レースとお金の話

今回のチャンピオンズリーグ(CL)はプレミア勢同士の決勝となりました。そしてヨーロッパリーグ決勝もプレミア勢同士。ここにきてイングランド復権の雰囲気を大きく感じておりますが、一方でその裏側はどうなのかと賑わせています。今回はマンチェスターシティ(マンC)とリバプールの財政面を見てみたいと思います。

欧州CL準決勝バルセロナ戦で3点目を挙げたリバプールのワイナルドゥム(左)は仲間と歓喜の雄たけび(ロイター)
欧州CL準決勝バルセロナ戦で3点目を挙げたリバプールのワイナルドゥム(左)は仲間と歓喜の雄たけび(ロイター)

マンCの売り上げは、2017-18シーズンのリポートによるとクラブの歴史上初めて5億ポンド(約700億円)を突破したとありました。その中で利益は約15億円ほどで、これはクラブの歴史で4番目の出来具合になるようです。この時点で把握できるのは、利益率でいくとたったの2%前後であるということになります。700億円を売り上げる一般の企業ではまず見ない数字と言っていいかもしれません。

一方でリバプールはどうでしょうか。17-18シーズンのリポートでは、売り上げは4億5500万ポンド(約640億円)ですから、マンCに近い数字ではあります。その中で特筆すべきは利益額です。その数字は1億2500万ポンド(税引き後で1億600万ポンド)つまり、日本円で約175億円(税引き後で約150億円)とリポートされており、シティと大きく異なります。この大きな要因はCLにあるようです。2015-16シーズンにベスト4に入ったマンCと、昨シーズンに続けて2年連続でファイナリストとなったリバプールの差がここに出ているようです。

リバプールのリポートの中には投資面の細かな記載がありました。クロップ体制後、約1億9000万ポンド(約268億円)近くが投資され、さらにトレーニング施設への投資5000万ポンド(約70億円)と合わせて350億円近くになるそうです。

リポートに関するインタビューでリバプールの最高執行責任者、アンディ・ヒューズは次のように発言しています。

「この成長と収益の増加により、私たちはオンピッチのチームそのものとクラブ運営インフラの両方に大幅に再投資することができました。財務結果はプレーヤーの取引コストや支払いのタイミングによって変動しますが、これらの最新の結果で明らかになっているのは、基盤となる財務基盤の強化とチームとインフラへの再投資です。私たちはこれらの成長分野からのプレーチームへの再投資を続けてきました。さらに、新しいトレーニング施設への設備投資は順調に進んでいます。これらは全て、選手やスタッフに最高級のアメニティーを提供し、練習場を基盤としたコミュニティーという位置付けのスポーツ施設を大幅に改善するでしょう」。

直訳にはなりますが、投資という部分の矛先がピッチだけでなくピッチ外の部分に大きく向いています。これが選手を育て、そしてファンとのコミュニケーションにつながることを熟知しているが故のプランニングであると分かります。チームのお金の使い方は、このインフラを整えるというところが1つ大きな鍵となりますが、これはもちろんユース・ジュニアユースといった下部組織への投資にもつながるお話になり、クラブ運営における大きな1つの柱となります。

一方、アジアに目を向けると、アジアチャンピオンズリーグの優勝賞金はわずか約5億円。ヨーロッパのビッグクラブがアジアでのマーケティングをもくろんでいる傾向を読み取ると(基本的にお金のないところにマーケティングは仕掛けませんから)まだまだアジアにはお金が眠っている可能性が大きいということにも言い換えることができそうです。この埋蔵金をどのような形で地元アジアに向けさせ、それをどのように運用していくのかが今後のアジアのフットボール市場を牽引する1つの要素となるはずです。そうであれば、一刻も早くアジアとしてのフットボール市場の改革が期待されます。

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

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